「Sportiva」5月号 | 手当たり次第の読書日記

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新旧は全くお構いなく、読んだ本・好きな本について書いていきます。ジャンルはミステリに相当偏りつつ、児童文学やマンガ、司馬遼太郎なども混ざるでしょう。
新選組と北海道日本ハムファイターズとコンサドーレ札幌のファンブログでは断じてありません(笑)。

Sportiva ( スポルティーバ ) 2010年 05月号 [雑誌]/著者不明
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もうどうでもいいといえばいいんですけれども、この前の「スポーツニッポン」紙「ダルビッシュ衝撃発言!」記事の話の、まあ続きです。

当のダルビッシュにブログで「迷惑」と言い切られるという目にあって、さてどう反応するかなと思っていたら。

その次の日にはこんな記事が出てました。ファイターズの前監督、ロイヤルズのトレイ・ヒルマン監督に、「ダルビッシュがメジャー挑戦の意思表明をしましたが」と言ってコメントを貰うという……。

無視した訳ですよ、つまりは。

いやあいい根性してるわ!と思ったものですが、しかも、それだけでは終わらなかった。

ダルビッシュはいつも、登板前日には「明日。」というタイトルでブログの更新をし、翌日の試合に向けての意気込みを書いています。

今日のスポニチ、ダルビッシュのその文章を引用する形で記事をつくってたんですね(苦笑)。

「某スポーツ紙」と題された先日の一文。発言をすりかえられた、記者氏も判っている筈だ、「迷惑」だと真っ向から言われたことを無視する。しかしわざわざ、「でも読んではいる」ということを明らかに示すようなことをしてみせる。

こういうことをする神経というものがよく判らないんです。「苦言はちゃんと届いてますから」的なサインででもあるのでしょうかね? それとも、特に何にも考えてなんかいないのかな(苦笑)。


本人がこれまでどう発言してきたかには全く関係なく、他人が執拗に主張し続ける「ダルビッシュはメジャーリーグへ行く」論にはいくつかの種類があります。

代表的なもののひとつが、「このまま年俸が高騰し続ければファイターズが払いきれなくなる」というもの。実力に見合った金額を得ようと思ったらアメリカに行く以外ないじゃないか、というんですね。

そしてもうひとつは、「ダルビッシュの実力は抜きん出過ぎているから、日本球界のレベルでは物足りなくなる筈だ」というものです。

どちらもいかにも一理あるように思えます。

ただ、ダルビッシュがどういうキャラクターの持ち主であるかということを考えると……どうも彼にはあまりうまく当てはまらないな、という気がしてくるんですよね。

今発売中の「Sportiva」にダルビッシュのインタビューが載っています。聞き手は元マリーンズの小宮山悟さん。これ、いい人選ですね。取材嫌いを公言している困ったちゃんのダルビッシュですが(苦笑)、インタビュアーが元選手という時は別。技術的なことを突っ込んで話してもちゃんと通じる相手だという安心感があるのでしょう。普段、報道陣の囲み取材を受けている時の仏頂面とはまるで別人のように(笑)、色んなことをよく喋っている。


──客観的に見ると、昨年のフォームで、十分バッターを抑えられると思うんだよ。無理をせず、“そこそこ”のピッチングで何とかなるのであれば、激しいフォームにする必要はないんじゃないかな。

「それじゃ面白くないです」

──そこを聞きたかったんだ。ダルビッシュ投手はピッチャーとして一体、どこを目指しているのか。

「防御率が2点前後で、15勝すればいいということであれば、別に何も変える必要はないんです。でも、それだけだと面白くないじゃないですか。まだ160キロを投げたことはありませんが、それ以上もいけると僕は思っています。すべての面で完璧というか、突出したレベルを追求していきたい」


防御率2点前後で15勝、というのは充分に「エースの働き」として賞賛されるレベルですよね。それを、普通にしていれば普通にクリアできる程度のことと見なしているダルビッシュは、確かに日本球界の中でひとりだけ飛び抜けた存在なのかもしれません。

しかし、「だからもっと外の舞台へ」というだけが選択肢ではないでしょう。

登板する全ての試合でチームに勝ちをつけ、防御率は限りなくゼロに近づける、それでなければ本当に満足はしない──以前のインタビューで、ダルビッシュはそう言っていたことがあります。今回口にしたのは、球速160キロ超え。新しい球種、通称「ワンシーム」に磨きをかけ、ブログを見ると、ホークスの杉内や馬原など他の投手達にも広めようとしてもいるようです。

普通にやっているだけでも好結果が残せる、というレベルにまで達した時、次にどこへ進もうとするか。

「だからメジャーリーグ」という意見は、こう言うと語弊があるかもしれませんが、「立身出世」に重きを置いたものであるような気がするんですよね。日本でやるよりステータスが高くて収入も多くて、だからアメリカに行くべきだ、という意見であるように、少なくとも私には思えるんです。

でも、ダルビッシュが今実際に進もうとしている道は、「野球それ自体だけ」に突き進んで行こうとするものであるように思えます。

登板する全試合でチームを勝たせるなんて、おそらくどんな投手にも不可能です。

防御率をゼロにするのも、そう。

けれどもその不可能なことに、昨日よりは今日、今日よりは明日、一歩ずつでも近づこうと本気で努力する。

自分で「僕はほんと完璧主義で」と言うダルビッシュにとって、日本にいても物足りない、などということは永遠にありえないのではないかと思うのです。