- 小野 不由美, 山田 章博
- 華胥の幽夢(ゆめ)―十二国記 (講談社X文庫―ホワイトハート)
おやおや……入院してしまいましたね、安倍さん。
食事もまともにとれない状態だったというなら、最近は確かにつらかったでしょう。でも、だからといって、やはりあんまり同情はできないなあ。辞めるなら参院選大敗の直後に辞めてさえいれば、もっと楽だった筈だものね。
政局のことなどは私には殆ど判らないし、判りたいという熱意もありません。自民党の党内抗争史についての知識も全く無いから、それに照らして現在の状況を読み解くなんていうこともできない。
ただ何となく、今までに読んだことのある小説の一節がいくつか、ふっと頭に浮かんできたりしています。
古代中国風異世界ファンタジー「十二国記」シリーズ。この物語の世界では、比喩や象徴ではなく、本当に「天命」によって一国の王は決められています。王がいなくなれば、誇張ではなく本当に天候が不順になり災害が起こり、文字通りに国は荒れる。王が即位すればその荒廃はおさまる。しかし王が道を失い政治に失敗すれば再び荒廃が始まり……立ち直ることができなければ、天はその王を見放します。この世界では、人間によるクーデターや革命という手順を経ることはないんですよね。天命を失った王は、早晩、死ぬ。
前王の悪政に憤り、理想に燃えて玉座につきながらも、失敗してしまった王。彼の死後、同志だった者達は暗澹たる思いで自問を繰り返します。彼の何がいけなかったのか。なぜ、天命を失ったのか。
「向いてなかった、というだけのことですよ」
天は、未来を見通して王を選んでいる訳ではないんですね。天命を下しても、いざ実際に政治をとり始めてみたら、眼鏡違いで能力不足だったということがある訳なんです。しかし。
「向いていない者が国権を握ることは悪だわ。確かに人が無能なのは悪いことじゃない。でも王や政だけはそうではないわ。無能な王など、いてはならないのよ!」
安倍晋三という人は、首相という役職に、「向いてなかった、というだけのこと」なのではないかという気がするのです。