番外編:視聴日記「報道ステーション」3/13 | 手当たり次第の読書日記

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新旧は全くお構いなく、読んだ本・好きな本について書いていきます。ジャンルはミステリに相当偏りつつ、児童文学やマンガ、司馬遼太郎なども混ざるでしょう。
新選組と北海道日本ハムファイターズとコンサドーレ札幌のファンブログでは断じてありません(笑)。

この前、3月1日の札幌ドーム。
八木智哉が彼を三球三振にきってとり、割れんばかりの拍手が起こった時。
やっと、とうとう、今度こそ、「お別れ」を済ませることができたんだと思ったものです。
3箇月もの間、まるで喉に刺さった小骨のようにしつこく引っかかって痛み続けていたものから、ようやく解放されたんだと。
それなのに。


前略 小笠原道大様。
これで一体何度目の弁解ですか。


欠かさず「報道ステーション」を観ている訳ではないので知らなかったのですが、「月刊カズシゲ」なんていうコーナーがあるんですね。讀賣ジャイアンツに特化したコーナーのようです(日本テレビならともかくも、テレビ朝日が12球団のうちジャイアンツだけをどうして特別扱いにしなければならないのか、不敏なる私には全く判らないのですが)。
そのコーナーの今回の特集が、「小笠原道大FA移籍の裏側」とかいうものでした。いかにも秘話紹介みたいに煽ってましたが……ええーと、すみません。以前にTBSの「Jスポーツ」でやってた小笠原特集と殆ど同内容に見えたのは気のせいですか(苦笑)。
内容は手っ取り早く言ってしまうと、「小笠原道大とはいかに誠実な野球選手であることか!」ということの主張でありました。オリンピックやWBCを経て広い世界へはばたきたくなった彼は、しかしチームとファンを心から愛してもいたのでそれはそれは深刻に悩み苦しんだのです……って、それじゃまるでファイターズのファンが彼の足を引っ張って重荷になってたとでも言わんばかりなんですけど(汗)。
ジャイアンツが彼を買っているのは単に選手としての能力だけでなく、人柄が素晴らしいからだ!ということも必死に力説。で、自分のことをそんなに見ていてくれたのかと感激した彼は入団を決意……いや、だからさ、そういう風に持ってこられると、古巣のフロントのほうは彼を「見ていなかった」ってことになっちゃうんですが話の運びとしては。大体、移籍発表時の北海道新聞に載ってたんだけどな、ジャイアンツ清武代表が彼のことを、最初の交渉の時から移籍の大義名分をさがしてるみたいに見えてたと言ってた、って。要するにただ単にファイターズから出たかった(=単身赴任はもういやだった&家族を北海道に呼ぶ気はさらさらなかった)だけなんでしょ?
特集の目玉らしかったのが彼の奥様がジャイアンツに宛てた手紙なんですが、いや、でもこれ別に秘話でも何でもないですよ? スポーツ新聞各紙こぞって、美談扱いで大騒ぎしてたネタだもの(たかが手紙1通が何で美談なのか理解に苦しむところですが)。で、感動的ナレーションで紹介された内容「ファイターズファンの涙の落胆という大きな大きな十字架を背負って」っていうのもねえ、あの時からもう知ってたし、それに当のファンにとってはむしろ思いっきり神経逆撫でされただけだったんですが(苦笑)。
という風に、いちいちいちいち、何で今頃になってからまたわざわざ蒸し返すかなこういうことを、という内容だったのです。
だけど、ここまではまだよかったのでした。
コーナーの締めは3月1日のあの試合。この流れからいえばまあ当然の作り方ではあったんですけれどもね。ブーイングを覚悟して打席に立った小笠原を札幌ドームのファンは大歓声で迎えたのでした、「いやー、小笠原選手とファンの関係性っていいですねーえ!」「ブーイング一切なかったですからね!」──ちょっと、待ってよ。
私は最初の打席は目撃してはいませんが、北海道新聞が出鱈目を書いてるのでなければ、「一切なかった」訳ではなかった筈ですよ。それに、皆何も考えずに脳天気に拍手したんじゃないんだ。番組スタッフは道新を読んだのか、HBCラジオを聴いたのか、ファンブログのひとつふたつもさがしてみたのか? 彼に拍手を送るスタンドの映像を流すなというんじゃないんだ。ただ、八木渾身の三球三振に沸いたところも入っていなかったら、部分としてはどこも間違っていなくとも、全体として与える印象は大嘘になってしまうんですよ。
テレビの取材を受けた人が完成した番組を観て不満や違和感を抱くという話はしばしば聞きますが、なるほどね、こうやって「最初から出来てるストーリー」に当てはまらない部分は事実であっても無視するということかと、しみじみ痛感したことです。「古巣のファンにさえ応援される素晴らしい人柄の小笠原選手」という見事なプロモーションビデオでした。何も知らない在京ジャイアンツファンにとってはどんなに感動的だったことでしょうね。道内ファイターズファンにとっては笑止千万の代物でしたが。


それにしても。
移籍決定の割とすぐ後でローカル局がやったインタビューは、彼本人だけの意向かもしれない。でも、その後「Jスポーツ」があって、またこの特集があって。
こんなに何度も弁解を繰り返してばかりいるのは、球団の方針なのか、それとも本人の意思なんでしょうか。
何度繰り返しても、どうせ同じことしか言えないのに。本心と綺麗事の境目も判然としない「ジャイアンツに入った理由」だけ。「ファイターズを捨てた理由」を彼が口にすることは決してない。そしてそれが言えないのなら、全ての弁解は無駄でしかない。


小笠原さん。
「Jスポーツ」でも「報道ステーション」でも、あなたの「苦悩」をひたすら強調していましたね。
こういう番組の作り方、あなた自身が本当に納得していますか。悩んだんだ苦しんだんだ辛かったんだと大声で世間に訴えて同情を買おうとするやり方に。
少なくとも私には、苦悩を強調すればするほど、あなたの像は「誠実」ではなく「めめしい」になっていくばかりです。
あなたに幻滅する日が来るなんて、前には想像もできなかったことだけれど。