『黄金』 ディック・フランシス | 手当たり次第の読書日記

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ディック フランシス, Dick Francis, 菊池 光
黄金
凱旋門賞の結果は、ディープインパクト3着、ハリケーンラン4着、シロッコ8着。
ということは、本命と目されていた3頭の中では一番だったということで。穴馬が勝つということはままあるものですし、あんまり負けた負けた予期せぬ展開だと騒ぎ立てるのは他の出走馬に対してちょーっと無礼じゃないかいな、と。どれも粒揃いの馬しか出てないんだし、ディープはヨーロッパ初参戦だったのだし。
とか何とかいえるほど、実は競馬のことなんてまるで知らないのではありますが。ただ、凱旋門賞、というレースの名前だけは前から聞き知っていたんですね。この小説を読んだもので。
1作ごとに主人公も設定も違うにもかかわらず、作者自身が元騎手で、どの作品にも必ず大なり小なり競馬のことが出てくるため「競馬シリーズ」と呼ばれているディック・フランシス作品のひとつです。
何人もの元妻と子供達から遺産相続を待たれていることに飽き飽きした初老の大富豪マルカム。現在の妻が殺されたり、彼自身が狙われたりするに及んでついに、家族達へのあてつけとして自分のために大金を遣うことを決意します。思いついたのは競走馬を所有すること。アマチュア騎手の息子イアンを指南役に、まず競り市で若駒を1頭買い、ついでスポーツ新聞で凱旋門賞の記事を見て、出走場の1頭を買いたいと言い出したのがレースの4日前! 1日すったもんだした末に、何とか1頭の権利の半分を手にして、意気揚揚とフランスへ。ちなみにマルカムがどのくらいお金持ちなのかというと、ロンドン-パリ間たった30分間のフライトに、ファーストクラスが取れなかったからといってチャーター機を手配しちゃうくらいです(爆)。
作中で描かれる凱旋門賞のレースはこんな感じ。出走は26頭、マルカムが共同馬主となったブルー・クランシイは明け5歳、イギリスの前年ダービー優勝馬ですが、イアンの予想では「六着か七着、不名誉な成績ではないが、賞金はもらえないだろう」というところ。イギリス、フランスにそれぞれ本命馬がいますが、イギリスの馬は以前のレースで疲労気味。イアンの1押しはフランスの馬です。
で、結果は、穴馬(ですよね、本命とは1度も言われてないから)が優勝。イギリスの本命馬は2着、激しい競り合いで消耗してもうカムバックできないかもとさえ思われるほどですが、どうせ遠からず引退して種牡馬生活に入ることになってたみたいだからまあいいでしょう(笑)。ブルー・クランシイは3着。フランスの本命馬は5着に沈みました。
マルカム達は大喜び、シャンパンで乾杯します。凱旋門賞の3着とは充分祝うに値する順位だと、元名騎手の作家ディック・フランシスは見ている訳ですね。で、この後ストーリーが進んでいくと、ブルー・クランシイはアメリカのレースで優勝して、種牡馬として数百万ポンドのシンジケートが組織されるんです。
何の競技でも、日本代表や日本人選手に対して「勝利間違いなし!」と煽りまくり、結果が優勝じゃなかったらイコール惨敗という捉え方で「何故なんだ!」とショックを受ける、これっていい加減何とかならないものでしょうか(苦笑)。さっき、「報道ステーション」を観てたんですが……ロンシャン競馬場に集う盛装の紳士達、華麗なドレスの御婦人達の中に、Tシャツに日の丸鉢巻き姿の日本人男性を発見してしまいました(汗)。普段全く使うことのない「国辱」という言葉がまざまざと脳裏に浮かんでしまったぞっ。