ここ数年韓流の輸出が話題になり、大ブームとの報道をよく見ました。
韓日関係悪化によりブームに陰りが見られるようですが、韓流の興業成果の数字資料はランキングが中心で市場規模等の全容が掴めませんでした。
しかし先日韓国側のプレス資料に韓流輸出額が出ていました。
驚きました。
記事は韓国銀行が開示した12年度の韓流関連企業の輸出額について一部触れたもので、
12年度の韓流関係企業(放送、映画、音楽、ライブイベント)の輸出は1億2千万ドル(約120億円)とありました。
韓流輸出の80.8%が日本ですから96億円の規模です。
小さすぎます。
日本の音楽邦画市場規模は12年度合計で6566億円です。
音楽の市場規模は昨年米国を抜き世界一位になりました。
内訳は12年で邦画は1282億円、CD等は3108億円、音楽配信は542億円。
11年でライブ等イベントは1634億円です。
韓流シェアは1.47%となります。
ちなみに韓国の音楽市場規模は102億円前後で08年度データでは世界44位。
発展規模から考えると小さいと言えます。
07年度の韓流関連企業の輸出額は全体で20億円であった事を考えれば国内市場に匹敵する輸出規模にできたと言えますが総額はかなり小さい規模です。
韓流コンテンツは主にウェブで視聴件数が世界一になったり(10億回視聴)、KーPOPが世界ランキングで上位を占めたりとしていますが、
輸出規模、国内市場規模を考えればあまりに整合性がとれない結果だと言えるでしょう。
どうりで規模に関する記事が少ないはずです。
しかもこれらのデータは2012年のものが多い。
日韓関係悪化が経済面に反映されたのは昨年11月下旬からですので、影響は軽微でこれです。
今年に入り韓流需要はマイナス60%前後と激減していることを考えれば日本への輸出規模は57億円前後まで縮小していると推定可能です。
しかしエンタメ等の情報誌では2011年前後の韓流の日本CD売上は244億円とありました。
CDだけで韓国の輸出規模を上回ります。乖離が大きすぎます。
対日韓流関連企業輸出額(96億円)との差額の148億円以上はどこに消えたのでしょう。
理由は二つ考えられます。
韓流規模を示すデータは韓銀のものでかなり数字の精度が高い。
但しあくまで輸出入をベースで計算されている為、日本企業が獲得する利益は排除される為(日本からすれば仕入原価)。
もう一つは日本国内売上規模はエンタメ雑誌の記事ですから誇張がある為。
業界の誇張があったとしても韓国の輸出額と国内での売上規模との乖離は現実的に100%以上はあるのでしょう。単純に考えると日本にとり粗利50%。
日本のエンタメ業界サイドから考えれば規模は小さくとも利益率が極めて高い商売だとわかります。
原価が低い為在庫リスクも小さい。
コンテンツの内容も日本と大きな差がなく声優さえ手配できれば顔形は同じ東北アジア系で違和感が少ない。
邦画や国内ドラマと遜色ないものが安値で手に入る。
放送からすればマスコミを巧く動かせば相応のブームが作り出せる確信があったのでしょう。
双方利害一致したわけです。
しかしブームから2年を待たずして双方とも思惑がはずれ再ブーム不能まで状況悪化します。
まず韓流の日本サイドの粗利悪化。
本来的には小規模ブームであったものをマスコミ動員でスタンダードの地位まで日本マスコミが喧伝したことで韓国サイドが価格引き上げを図り関係悪化しました。
徐々に韓流サイドの発言力が大きくなり日本サイドの旨味が小さくなり、
マスコミ、放送の韓流強化の経済合理性は少なくなりました。時悪くして韓日関係悪化により環境も大幅に悪化したわけです。
規模小さく利益率も悪化し在庫リスク拡大が発生した日本サイドは早期に撤退を決めました。
ブーム当初韓流収益の90%以上を日本が確保し、残額10%を韓国に還元するスキームを構築。
しかし日本マスコミ宣伝力により知名度獲得をした韓国サイドは利益配分に不満を拡大。
しかし日本市場シェアは2%以下で日本サイドは時期尚早と主張しますがハードネゴが続きました。
撤退速度は驚くべきスピードで進みました。
韓流は世界最大の日本市場でシェア2%以上増やす前に市場を失ったわけです。
韓国には大きな痛手ですが日本は2%のコンテンツ消滅で看過できる範囲です。
市場シェアを2割以上有するならともかくこれでは話になりません。
しかし日韓関係悪化直前ですら市場シェアの2%前後の規模だったことには驚きました。
エンドユーザーからのニーズ拡大ではなく広告媒体である放送局と文化輸出拡大の糸口を図った韓国とのいわば供給サイドで作ったブームで、消費者に火付け前に自爆するとは愚かとしか言えません。