先日の報道で、福島第一原発の一時間あたりの排出量が事故直後と比較して1,000万分1になったという記事を読みました。
「おお、大分下がったのか」と見ますが、一時間当たり2億ベクレルとあります。
正直これがどの程度の水準なのか・・・。判断がつきません。
今現在、福島市や郡山市は空間放射線量は依然1.00以上を推移しています。
①これは、土壌にたまった放射性物質が常時舞い上がり放射線量が減らないのか、
②あるいは原発から放出される放射線量が減っていないのか、
はたまた両方か。
①であれば徹底的な土壌汚染の除染で少しずつでも居住可能空間や産業可能空間を拡大することはできます。また時間はかかるでしょうが、農業の再開も一歩づつ進めることも一定の範囲は十分かもしれません。
しかし②であれば状況は変わらず。むしろさらに降り積もっているため徐々に居住可能区域が遠くなるといえるかもしれません。
その二つについて、政府や自治体、東京電力などからわかりやすい解説はでていません。
もしかしたら解説など出すつもりはないのかもしれませんが。
なにかよい情報はないかと色々調べますが、所詮は素人。
十分な知識もなくその専門性高い分野を付け焼刃で理解することは難しく、結局安全な領域なのかそうでないのか明確な根拠は見出すことができませんでした。
しかし、「コンタンのブログ」様にて興味深い記事を見ました。
震災前京都に毎月降る放射性物質は3億ベクレル前後あるという識者の分析です。
原発は通常化稼動時でも放射性物質は微量ながら排出しており、その数字は各地や農産物なども含めてモニタリングを実施し、安全性を調査しているというのは聞いたことがあります。
そこで、通常時原発はどの程度の放射性物質を排出してきたのか調べてみました。
原発を運転開始しておおよそ40年前後で微量ながらの放射性物質の排出を継続してきた中で、有意に関連する病気や健康被害があるという情報はありません。
であればまず、その通常期の排出量について調べることは意味があると感じました。
色々ネットを右往左往しましたがちょうどいい資料がありました。
800ページ以上からなる報告書ではっきりいって見る気を失いますが、以下の資料があります。
「原子力施設運転安全管理年報 平成22年度版」 原子力安全基盤機構
この資料の619ページ以降に各原子力発電施設が排出する放射線の年間放出規制値が記載されており、さらに数ページ後にその実績値が示されていました。
もちろんこれは通常運転時の排出放射性物質なので、セシウムやストロンチウム、テルルなどは記載されておらず「希ガス」「ヨウ素」と記載され規制の上限が記載されています。
私にはこの「希ガス」「セシウム等」のどちらがより危険な物質化は判断がつきません。
だれかお分かりになれば教えていただきければ幸いです。
【福島第一原子力発電所】
年間放出目標値(622P) 8.8E+15(880兆ベクレル)
年間放出実績値(644P) N.D(不検出)
N.Dとあるので不検出ということだと思いますが、おそらく一時間あたりでの排出量が小さいので不検出となっただけで相当量はでているのかなと思われます。
2007年の放出量は2.2E+8(22百万ベクレル)とありましたので。
現在一時間あたりの排出量が2億ベクレルというのであれば年間放出量は1兆7520億ベクレルとなる計算です。希ガスの排出管理目標値の880兆ベクレルに比較すれば小さい水準と感じますが、果たしてこれが安全なのかどうなのか皆目検討がつきません。
多くの原発が今現在はほとんどN.Dですが、関西電力の原発3箇所は排出が確認できますのでそれと比較してみます。
【関西電力所有の3原子力発電所】
年間放出目標値(622P) 9.3E+15(930兆ベクレル)
年間放出実績値(644P) 8.34E+11(834億ベクレル)
つまり一日あたりで2.3億ベクレル。一時間あたりで9.5百万ベクレルとなり、福島第一原子力発電所で一時間当たりで関西電力3原子力発電所のほぼ20倍のを排出していることになります。
排出されている物質が異なることから安全性の比較は難しく思いますが、制御範囲に入りつつあるということなのかもしれません(楽観的かもしれませんのであまり当てにしないでください)
【福島県内の高い線量について】
ここからはまったくの私見です。
上記からの考え方からは排出量は限定的になりつつあると感じます。
だとすれば現在の汚染地域ならびに汚染された作物、土、水利にはこれ以上目だって大きく降り注がないと考えることができるのかもしれません。
であれば特に居住区や産業区域は水や客土や排土などで生活安全水域をとりもどせる可能性があります。
ただ当然洗い流せば下水やあるいは上流域での水除染は下流域の上水道を汚染する可能性はあり、徐々に水の流れる順番に汚染が発覚するでしょう。やっかいです。
しかしは入り口と進入経路さえわかっているのであれば除染物質の活用やろ過である程度の回避は可能でしょう。上水道の汲み上げ日の調整などで回避が可能かもしれません(下水はたまる一方ですが・・・)
すでに福島県や近隣県などでさまざまな除染の試みは行われています。
各生産者も独自に数値を注目しつつ状況を分析しつつあります。
国や行政もようやく準備が整いつつある印象を持ちます(いまさらですが)。
除染が成功するのかあるいは最早その領域にないのか、
様々な意見を見ますし、これらの行動自体が高いリスクであることも事実です。
しかしむげに東日本全域を汚染地域とみなし、あきらめてしまうにはあまりにも失う土地が大きすぎます。
避難や除染、あるいはそれ以外の方法を組み合わせつつ可能な限り対策を講じることが必要だと感じます。
今はまだその入り口にすら立っていません。