JT意見書への全面的反論:タバコ販売と命や健康は両立しない『全面禁煙の飲食店のみを選択します』 | 青森県タバコ問題懇談会BLOG

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このブログの前entryに掲載したJTとたばこ販売組合の意見書に対する、青森県タバコ問題懇談会の全面的・徹底的な反論です。

できましたら、以下の内容を順にご確認いただいた上でお読みいただけると、更にご理解が深まるかと思います。市民・県民の一人ひとりの声が現実を動かす力となります。

1)弘前市長・議長にタバコ対策基本条例の制定を要望 / 要望書PDF(2014.2.19)

2)市町村長・議会に求める総合的タバコ規制政策「タバコ対策基本条例」の提案 / PDF(2014.1.25)

3)JTとたばこ販売組合の意見書 / PDF

4)JTとたばこ販売組合の意見書に対する懇談会の全面的反論 PDF(2014.4.2)

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タバコの販売を維持することとタバコの害から市民を守ることは両立しません
『私たちは全面禁煙の飲食店のみを選択します』
弘前たばこ販売協同組合・日本たばこ産業等の意見書(以下「意見書」)への全面的反論

2014年4月2日 青森県タバコ問題懇談会

(以下、「意見書」の主張を 意見書:「 」で引用し、>> 反論 で当懇談会の反論を述べます)

1,規制の法的根拠として「タバコ規制枠組条約(FCTC)と健康増進法」等をあげており、オリンピック開催都市には、受動喫煙防止法・条例が必須としている点について

意見書:「・・・ガイドラインとは、FCTCの締約国が具体的な規制措置を検討するに当たって参考となるように作成されるものであり、締約国に対し法的義務を課すものではないと認識しています。」

>> 反論1

日本国憲法第九十八条には、「この憲法は国の最高法規であって、その条規に反する法律、命令、詔勅及び国務に関するその他の行為の全部又は一部は、その効力を有しない。日本国が締結した条約及び確立された国際法規は、これを誠実に遵守することを必要とする。」と国際条約遵守義務が定められており、政府および地方自治体は、日本国憲法とFCTCを誠実に守る必要があります。

FCTCガイドラインは守っても守らなくてもいい条項ではなく、「分煙不可・例外なし・罰則あり」というFCTCガイドライン3条件の意味を理解すれば、分煙という手段があり得ないことは明白です。

法的義務がないから屋内全面禁煙にしなくていいなどと主張しているのは日本ただ一国だけであり、世界中の国や州がFCTCを遵守して屋内全面禁煙を続々と実施しています。対策の遅れていた喫煙大国ロシアでも2014年6月から禁煙化され、主要国では日本だけが取り残されています。

現状(罰則のない2003年の健康増進法および2010年の局長通知)において、FCTCの求める屋内全面禁煙が実現できていないのだから、厚生労働副大臣の「担保できている」という答弁が現実と異なっていることは明らかです。

国際オリンピック委員会(IOC) は1988年以来、オリンピック大会での禁煙方針を採択し、会場の禁煙化とともにタバコ産業のスポンサーシップを拒否しています。2010年7月にはWHO とタバコのないオリンピックをめざす協定にも調印しています。
http://www.nosmoke55.jp/action/olympic.html

2,成人の喫煙率低下について

意見書:「たばこは合法的な嗜好品であり、・・・喫煙者率削減に関する数値目標を新たに設定することは、・・・問題があると考えます」

>> 反論2

弘前市タバコ対策基本条例(仮称)では、「喫煙者率削減に関する数値目標を新たに設定」していません。成人の喫煙率低下の数値目標は、すでに公表されている「健康ひろさき21」に記載されています。

タバコは依存性のある薬物で喫煙者の半数の命を奪う商品であり、「嗜好品」ではありません。喫煙および受動喫煙による死亡および健康被害を可能な限り無くしていくことがタバコ対策基本条例(仮称)の目的です。

3,受動喫煙防止対策として、全面禁煙しか認めていない点について

意見書:「・・・本来の受動喫煙を防止する趣旨・目的を超えて、一律に禁煙を強制するための措置であり、著しく合理性を欠くものであって、適当ではありません。これまで分煙環境を整備して、受動喫煙防止対策を推進してきた事業者の努力や投資を無駄にするだけではなく、施設の運営や経営に関する事業者の自由を大きく制約するものとなっています。」

>> 反論3

「一律に禁煙を強制する」という記載は誤りです。禁煙を強制することは一切求めていないし、どこにも記載していません。

「タバコ煙」は発がん物質第1類(=ヒトに対する発がん物質)です(2010年5月に日本産業衛生学会が分類に追加)。発がん物質による受動喫煙の危害を非喫煙者に加えるのは許されません。

飲食店ではPM2.5(微小粒子状物質)が数十~数百μg/m3の危険域に達します(図1)。

受動喫煙は放射線被ばくと同様に、どこまでなら安全という「閾値(しきい値)」はなく、分煙で受動喫煙を防ぐことができないという結論は2006年の米国政府の報告書で最終的な決着が済んだ問題です。その合意を元にして2007年にFCTCガイドラインが定められました。

日本政府も分煙で受動喫煙を防ぐことができないことは何度も明確に認めています。

JTは海外では分煙で受動喫煙を防ぐことができないという合意に従っているのに、日本国内でだけ「分煙」で防止できると「意見書」で主張しており、ダブルスタンダードです。

従業員の健康を守るという意識が必要です。未成年や妊娠可能な年齢の女性を含む多数の飲食店従業員が、日常的に多大な受動喫煙の被害にあっていることを忘れてはいけません。

厚生労働省局長通知では「原則として全面禁煙にすべき」としながらも、FCTCガイドラインから逸脱した誤った解釈として「全面禁煙が極めて困難な施設」における分煙を当面認める記載をしていますが、後述のように「例外なく地域で一斉に実施する」ことによって飲食店の禁煙化はどこの国でも困難なく達成できていることから、飲食店を「極めて困難な施設」と解釈する必然性はなく、「原則」に従って「全面禁煙」とすべきです。

日本国政府も2010年の「新成長戦略」において、2020年までのできるだけ早い時期に職場の全面禁煙化(受動喫煙のない職場)を実施すべきとしています。現在すでに2014年に達しており、一刻も早く実施すべきです。

分煙施設は無駄な投資になるだけでなく受動喫煙を防げません。全面禁煙なら全く費用がかからずに客や従業員の命を守ることができます。飲食店経営者の良識が問われています。

図1 飲食店における微小粒子状物質(PM2.5)の測定結果

図1 飲食店における微小粒子状物質(PM2.5)の測定結果

4,屋外についても全面禁煙としている点について

意見書:「・・・屋外での受動喫煙による深刻な健康影響に関する科学的事実は示されていません。」

>> 反論4 

わずかなタバコの臭いを感じるだけでもPM2.5は1μg/m3以上上昇しており、PM2.5は年平均で「10」上昇すると全死亡リスクを6%増加させることから、1μg/m3で0.6%(10万人あたり600人)死亡リスクを増加させます。すなわち、屋外においても受動喫煙の害をなくすためには禁煙にする以外に方法はありません。(参考:放射線被ばく100mSvで0.5%のがん死増加)

健康増進法および厚労省局長通知においても、屋外の公園、遊園地、通学路等における受動喫煙防止対策が求められています。

砂漠の真ん中で一人で吸うのならともかく、多数の観光客でにぎわう観光地、公園、登山道、施設の出入り口や通路などにおける喫煙により、日常的に受動喫煙の被害が発生しており、屋外でも屋内と同様の受動喫煙防止対策をとることが必須のはずです。

5.経済影響について

意見書:「・・・海外での事例や神奈川県の受動喫煙防止条例の経済影響において示されているように、事業者に多大なマイナス影響を与えることは必至であり、市民の生活にもその影響が波及するものと考えられます。」

>> 反論5

2003年のアイルランド以来、世界各国で飲食店の全面禁煙化が実施されているが、世界中で飲食店業が衰退しているという事実はなく、経営に影響が出ないことは実証されています。

2007年のWHO世界禁煙デー小冊子にも、中立公正な調査で経営に悪影響を与えたことを証明しているものは一つもないと明記されています。

もし神奈川県において悪影響が出るという試算が現実を反映しているならば、それは「例外なく一斉に全面禁煙化する」という原則から逸脱したからであり、一斉に禁煙化すれば悪影響が出るおそれが皆無であるだけでなく、禁煙化による非喫煙客の来店増も期待できます。

私たちは「青森県の全面禁煙の飲食店マップ」をインターネット上で公表し、更新し続けており、掲載店は130店舗を超えていますが、そのほとんどは質の高い繁盛店であり、県外のお客さまに対してもお勧めできるお店です。私たちは全面禁煙の飲食店のみを選択します。 

6.たばこ税および、たばこ販売店への影響について

意見書:「・・・財政に多大な貢献をしているとの自負と誇りを持ち、タバコ販売を行っているところです。」

>> 反論6

タバコ税収をはるかに上回る医療費や損失所得などの経済的損失が生じています(図2)。

何よりも、その税収は市民・県民の命や健康と引き換えに生じたものであることを銘記すべきです。タバコの製造・販売責任のある者が地域社会に貢献しているかのごとき主張をすることは厳に慎むべきです。

図2 タバコ税収と喫煙のコスト

図2 タバコ税収と喫煙のコスト

意見書:「・・・今後タバコ対策の検討にあたりましては、是非ともタバコ産業関係者の意見もお聴きいただきますよう、御願い申し上げます。」

>> 反論7

FCTCの第5条第3項「公衆衛生の政策をタバコ産業から守る」のガイドラインには、「締約国は、タバコ産業の雇用するいかなる人物も、タバコ産業の利益のために働く団体も、タバコ規制や公衆衛生政策を立案・実施する政府機関、協議会、諮問委員会の構成員として認めるべきではない。」とあります。またFCTCにはタバコ産業の社会貢献活動(CSR)活動を一切認めないことが明記されています。

その理由は、CSR活動と称する各方面への多額の資金拠出が、この「意見書」のように、タバコ販売を維持するためにタバコ規制政策を妨害する理由に使われるためです。

7.さいごに

「意見書」はただただタバコの販売の減少を防ぐことが目的で、市民・県民の健康を守るという意識が欠如しています。タバコの販売を維持することとタバコの害から市民を守ることは決して両立しません。

「社会的責任」をしきりと強調していますが、自らが製造・販売している商品の利用者の半数を死に至らしめ、家族や周囲の人の健康と命を脅かしていることへの「社会的責任」を感じるなら、国際条約に則ったタバコ規制政策を受け入れるべきです。

現状は2003年の健康増進法に違反しています。タバコ対策基本条例の提案は現行法(健康増進法、FCTC)の枠組みの中で制定・施行できる内容であり、医学的にみても法律的にみても、「意見書」が言うような「科学的根拠や合理性が欠如」した点はどこにもありません。

受動喫煙防止義務に違反している飲食店は法令遵守(コンプライアンス)違反であり、「社会的責任」を主張するのであれば、法令を守ることが第一のはずです。

青森県タバコ問題懇談会が要望した弘前市タバコ対策基本条例(仮称)は、①分煙を認めない受動喫煙防止、②成人の喫煙率低下、③未成年者の喫煙率ゼロ、④妊婦の喫煙率ゼロを求めています。しかし現段階では罰則規定は設けず、弘前市民の良識に訴える条例案です。弘前市民を例外なく「受動喫煙の危害から守る」条例の制定に期待しています。