「受動喫煙死毎年2万人」の根拠 | 青森県タバコ問題懇談会BLOG

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                      2008年11月28日
青森県公衆浴場業生活衛生同業組合 御中
青森県健康福祉部保健衛生課 御中

        青森県タバコ問題懇談会代表世話人 久芳康朗

  「受動喫煙により国内で毎年2万人が死亡」の根拠

 受動喫煙による死亡者数については、肺がんや心血管疾患による死亡リスクがどの程度増加するかという報告は多数ありますが、母集団となる受動喫煙の被害者数と程度の把握が困難なため、個々の疾患による死亡者数を積み上げた国内における年間死亡者数の推定値の報告はあまり多くありません。

 その中で私たちが引用した「2万人」という数字は、『タバコ病辞典-吸う人も吸わない人も危ない』に記載されているWHOの警告や国立がんセンターの発表を元にしていますが、ここ数年で受動喫煙による死亡リスクが従来よりも高いようだと言われてきていることを考え合わせると、2万人は最低限の数字であり、実際にはそれ以上なのではないかと推測しています。

資料1『タバコ病辞典-吸う人も吸わない人も危ない』加濃正人編(p.20-22)

(抜粋)
 職場や家庭で受動喫煙にさらされ続けると、20人に1人が受動喫煙のために死亡します。重金属や有機溶剤など一般の環境汚染物質の基準値が「10万人当たり1人の死亡」を許容する濃度から定められていることを考えると、受動喫煙はその5000倍の危険性を発揮することになります。

表 10万人当たりの生涯リスク(松崎, 1998)
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 喫煙で早死にする    50000人
 受動喫煙で早死にする  5000人
 交通事故死       1000人
 アスベスト住宅で肺がん死  10人
 環境汚染物質の許容基準   1人
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(中略)フィンランド職業衛生研究所の試算は、全死亡の0.9%が職場での受動喫煙によるとしていますが、それをわが国にあてはめると約8700人にのぼります。職場以外での受動喫煙や肺がん以外のがん、子供の病死も入れると大変な数になりそうです。

 カリフォルニア大学のグランツらは、米国における年間受動喫煙死亡者が5万3000人であり、受動喫煙は、能動喫煙とアルコール過剰摂取に次ぐ3番目に主要な、予防可能な死亡原因だと述べています。

 WHO(世界保健機関)は2001年の世界禁煙デーに際して「受動喫煙によって人口100万人当たり年間147~251人の死亡者が発生する」との警告を発表しました。(中略)これを日本にあてはめると2~3万人に相当しますが、主に分煙の徹底したアメリカのデータを基にしての試算ですから、分煙が遅れていて非喫煙者のほぼすべてが受動喫煙曝露者であるような日本では、実際の犠牲者がこれより多くなっても不思議はありません。

 日本で行われた推計では、国立がんセンターが「年に1万9000人が受動喫煙死、うち肺がんが1000~2000人」と発表しています。

 喫煙者の方から見ても受動喫煙の問題は深刻です。何の悪意もなく、周囲にいる人を傷つけ、ときには殺してしまいますが、その相手は、もっとも高い確率で愛する家族です。(中略)

 日本での受動喫煙による犠牲者を年間1万9000人とすると、喫煙者3200万人が毎年1万9000人を殺しているわけで、喫煙者の1684人に1人が1年のうちに(合法的な)殺人を犯しています。喫煙生活を50年続けたとすると、34人に1人が一生のうちに人を殺してしまうことになるのです。もちろん、人前では絶対喫煙しないような優良喫煙者を含めての計算ですから、職場や公共の場で平気で喫煙できてしまう人では、一生涯のうち何人あの世に送っているかわかりません。

資料2「けた外れに大きい受動喫煙の被害」松崎道幸(禁煙ジャーナル No.204)

 ここでは直接国内で何万人が死亡しているかという数字では出されていませんが、公衆浴場の禁煙化要請文に「アスベスト等を上回る最大の健康被害」と書いた根拠が述べられています。『タバコ病辞典』に引用されている同じ松崎氏の推計値では受動喫煙死が10万人あたり5000人になっているのに対し、ここでは数千から数万人にまで上昇しており、受動喫煙による被害が一般の想像をはるかに超えたレベルにあると言えます。(推計値はあくまでその根拠に基づいて計算した値であり、推計方法により変動しますのでこれらの値が絶対的なものだと言うわけではありません)

(抜粋)
 完全分煙のファストフード店で1年だけアルバイトをしても、10万人から数十人死亡するリスクを職場の受動喫煙で背負わされることになり、これだけでアスベスト汚染が超えてはいけない致死的汚染レベルを10倍も超えているのです。(中略)

 人間がタバコ煙の臭いを感知する最低濃度はPM2.5が1μg/m3の時です。この濃度に10万人が一生さらされた場合、600人が受動喫煙死します。ですから、ごくごくわずかタバコの臭いがするという環境は、アスベストの敷地境界基準(犠牲者を10万人あたり6人以下にとどめなければ、懲役1年)を100倍上回る極めて危険な状態になっています。(中略)

 アスベスト汚染で10万人から6人以上死亡者が出るのは許せないが、受動喫煙で10万人から600人死ぬのは問題ではないというのは、完全なダブルスタンダードの主張です。