総合支援法3年後の見直し議論のまとめ(その19) | あおいさんの部屋

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ネコにアイス。又村です。

不勉強ながら初めて知ったのですが、ネコにアイスは大NGなのだそうで。具体的には、食べると頭がキーンとなって、失神しちゃうこともあるのだとか。

・・という、猫舌は熱いだけじゃないネタはさておき、今回も引き続き、障害者部会で議論された総合支援法3年後見直し議論を取り上げていきたいと思います。

【障害者部会報告書はこちらから】
http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi2/0000107941.html

【障害者総合福祉法制定に向けた議論テーマ】
※ 今後は、原則としてこの順番で取り上げていきます

7 高齢の障害者に対する支援の在り方について
8 障害支援区分の認定を含めた支給決定の在り方について
9 障害児支援について
10 その他の障害福祉サービスの在り方等について

(財務省が示した課題等はこちらから)
http://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-12601000-Seisakutoukatsukan-

Sanjikanshitsu_Shakaihoshoutantou/0000091249.pdf
※ PDFファイルとなります

前回は、「7 高齢の障害者に対する支援の在り方について」全体のまとめと将来予測の前提として、障害福祉サービスと介護保険サービスの関係性を整理しました。今回と次回は、具体的な今後の方向性を整理したいと思います。

高齢期を迎えた障がいのある人への支援、とりわけ介護保険サービスとの関係性については、身体障がい分野と知的・発達障がい分野で課題の現れ方が大きく異なります。
知的・発達障がい分野においては、前回で整理したとおり、実質的には生活介護を利用している方が65歳に達した場合の対応がポイントとなります。単純化すると、

A 65歳を超えても引き続き同じ生活介護事業所に在籍することができる
B 利用者負担についても、できるだけ現行に近い(負担なし)状態が維持できる

の2点がクリアされれば、制度的にはかなりの部分が解決することとなります。

そこで、総合支援法3年後見直しでは、この部分に対応する改正が行われています。具体的には次のとおりです。

1 介護保険法の「基準該当」制度を活用し、生活介護等の事業所が小規模な介護保険デイサービスを併設できるようにする
2 65歳以前から長期に渡って総合支援法サービスを利用していた人に限り、利用者負担を大幅軽減する

1については、「基準該当」という言葉がキーワードとなります。これは、法律で定められた本来の要件は満たしていないものの、市区町村の判断で(一部かけている要件はあるものの)国が定める事業所指定基準に該当している扱いとできる仕組みのことです。今回の事案でいうと、もともとの生活介護事業所(たとえば定員30名とします)が新たに(介護保険法に完全合致した)デイサービスを併設しようとすると、新たな活動スペースしたり20名程度の定員枠を設定したり、生活介護本体の事業に大きな影響を及ぼすような業態変更をしなければならない可能性もあります。
そこで、総合支援法の改正では、基準該当の仕組みを活用することで、市区町村の判断により、たとえば本来の定員よりも少ない人数(たとえば5名程度)や本来よりも狭い活動スペースで介護保険のデイサービスを実施可能としました。つまり、継続して生活介護を利用していた人が65歳になった場合、制度としては介護保険へ移行しますが、通い先は変更しないで良い仕組みとしたわけです。

2については、もともと総合支援法には「高額障害福祉サービス費」という制度があり、月々の福祉サービスの自己負担が37,200円を超えた場合には超えた額を払い戻すことになっています。また、介護保険法にも「高額介護サービス費」という制度があり、基本的には同じ仕組みとなっています。
そして、総合支援法の改正では、「高額障害福祉サービス費」あるいは「高額介護サービス費」に特例を設けて、65歳以前から長期に渡って総合支援法サービスを利用していた人に限り、払い戻し対象を「37,200円を超えた金額」ではなく「0円(またはそれに近い額)を超えた金額」とする方向が示されています。つまり、仮に介護保険のデイサービスを利用した場合でも、一時的に建て替えは必要になるものの、最終的には(ほぼ)全額が戻ってくる・・ということになるわけです。
生活介護を利用している人は多くの場合利用者負担ゼロですので、介護保険のデイサービスを利用することになった場合、1割の利用者負担を工面できるかどうか大きな課題でしたが、この仕組みが適用されれば、利用者負担問題については概ね解決すると思われます。

もちろん、制度を変えたからといってすぐに上記のとおりになるわけではありません。基準該当の運用は市区町村の判断ですので、地域によっては制度はあるけど使えない・・という状況が生じる可能性は考えられます。また、高額障害福祉サービス費については、最終的に大半(または全額)戻ってくるとはいえ、一時的には建替えて支払う必要があることから、手持ち金が十分ではない人にとっては、それなりに重い負担となります。こうした一時負担を軽減するための仕組みづくりも必要になるでしょう。
ただ、そうした課題はあるにしても、今回の法改正がかなり思い切った制度改正であることは事実です。高齢期を迎えても、通いなれた通所先を継続して利用できるような仕組みになることが期待されます。

一方で、障がいのある人が暮らす場として広がっているグループホームについても、新たなあり方の検討が必要となります。というのも、現行のグループホームは日中に入居者がいなくなる(日中は会社や支援事業所で過ごす)ことを前提に制度設計されていますが、高齢化に伴って外出頻度は減っていく傾向にあり、グループホームで1日を過ごす人が増えていく可能性が高まるからです。

では、今回はこれくらいに。グループホームの課題などについては、次回に取り上げたいと思います。