今年の新入生へのあいさつではおおよそ以下のようなことを言った。かなり過激である。   

 ようこそ、常熟理工学院へ。まずは入学おめでとう!皆さんの中で常熟出身の人はどのぐらいいるか?あまりいないようだ。5%程度。ということは、ここにいるほとんどの人は、わざわざ故郷を離れてこの常熟へ、日本語を勉強しにやってきたわけだ。では皆に聞こう。常熟理工学院の日本語学科というのは、そうまでして、つまり大切な家族の元を離れてまでして、学ぶ価値のある場所か?

    私は大阪人だ。しかし大学は東京の東京大学を選んだ。ただ東京大学は私を選んではくれなかった(笑)。つまり入学試験に失敗したということだ。周囲の人も自分も、絶対大丈夫だと思っていたので、ずいぶんショックだった。人生最初の挫折というやつだね。そして結局東京大学は最後まで私を選んでくれなかったので、私は次の年、地元の大学へ入った。

    もう数十年になるが、東京大学の合格発表の日、掲示板に自分の受験番号が抜けていた光景を、はっきりと覚えている。ずっと覚えている(笑)。

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    覚えているからこそ、今の自分があると思っている。断っておくが、東京大学というのは日本で一番優秀な大学だ。日本の高校生は皆その大学を目指すといってもいい。卒業すれば、それなりのいい人生が送れる、と言われている。私はその東京大学に入ることができず悲しかったし、ずっと応援してくれていた両親、特に母親に大変すまないと思った。私は悔しかった。そして負けてなるものかと思った。

    そして今。残念ながら自己評価だが、私は東京大学で学び、卒業した人々よりも、ずっと充実した人生を送ることができた、と思っている。

    推測でこんなことを言って申し訳ないが、皆さんの中で本当にこの常熟理工学院に入りたかった人は少ないと思う。上海外国語大学や蘇州大学の方が良かったのではないか。さらには本当は日本語学科に入りたいと思っていなかった人も、いることだろう。

    この大学の日本語学科は決して中国一ではない。でも日本語というのは、外国語というのは、頭の良し悪しはあまり関係なく、最高レベルに達することが可能なのだ。これが物理や化学と違うところだ。がんばった者、情熱をもって継続的に取り組んだ者が一番になれる。ほかの大学に行った人たちに負けまいとがんばりなさい。苦しくなったら、怠けたくなったら、小さいときからずっと、君たちの厳しい受験戦争を応援し続けてくれた両親のことを思いなさい。あなたを支えてくれている人のことを思いなさい。そして常熟理工学院に入って良かったと思って卒業していきなさい。良かったと思える人生を送りなさい。