冊子「前衛」４月号の特集
「貧困と格差をなくし、人間らしい雇用のルールを」の中で
「国際競争力を口実にした新たなリストラ・非正規切りに国民的反撃を」
と題した座談会に、山口県労連副議長とマツダ弁護団の弁護士でもある仁比聡平氏が参加され、その時の模様が掲載されました。
座談会の内容は３０ページにも及ぶため、全てを紹介するわけにはいきませんが、ここでは座談会で紹介されたマツダ派遣切り裁判に関する内容を抜粋して紹介したいと思います。
マツダの労働者がたたかいに確信を深める
（山口県労連副議長 談）
リーマンショック後の電機・自動車の大リストラで、山口県のマツダでも広島と山口・防府の両工場で約１５００名の派遣労働者が切られました。山口県では約７００名です。私たちの県労連は、大企業職場への影響力がない中で、理不尽な非正規切りに労働組合としてどう対応し、がんばるのかと議論し、工場前や駅頭の宣伝などで訴えていきました。３０名を超える派遣労働者が山口ユニオンに加入し、１７名が訴訟に立ち上がったのです。
彼らが当初、たたかいに立ち上がってきた思いは、いずれ大企業のマツダで正社員として働くことが出来る。また会社側からも将来そうするからと言われてきた。だから頑張ってきたし、頑張らされた。しかし裏切られた。このことへの怒りが根底にあると思います。原告団の団長は訴訟になってからも「自分はマツダの現場が大好きで、今でもマツダが好きなんです。戻って頑張って働きたい」と切々と訴えていた。一生懸命頑張りたいという労働者を意図も簡単に切ってしまう理不尽さ。
３年前に訴訟を始めて１３回の裁判を重ねてきたが、原告は生活のために三重や熊本・福岡・広島などとバラバラになり、地元に残っている人は殆どいなくて裁判に参加することもままならない状況で通常、裁判に参加できるのは７～８名です。
労働局に申告をしたり、裁判が終わるたび、直後に工場の門前に宣伝をしたり、２年前からマツダの工場のあるＪＲ防府駅前で毎週土曜日に宣伝・署名行動をずっと続けてきています。そのことを通じてマツダの職場のなかにも変化が表れました。２００９年６月、労働局の是正指導を受けた１ヶ月後に、マツダは残っていた派遣労働者を全員６ヶ月ではあるが期間社員という形で採用した。そして翌年１１月以降に残っていた６ヶ月雇用の期間社員を順次、正社員として採用すると発表しました。
「なぜ労働局に申告をした自分たちが正社員として採用されないのか」という悔しさはあるが、自分たちの運動やたたかいが職場の非正規労働者の雇用や労働条件を守る大きな力になったという確信を深めた。自分たちのたたかいの意味、労働組合も知らなかった自分たちが労働組合に結集して頑張ってきたことの意味、これからも頑張ることの意味がつかめた。
しかし、生活はなかなか大変です。どこの争議団もそうですが生活保護を受けたり、職業訓練や雇用保険の失業給付を受けたり。ただ、１７名のうち１名も欠けていないというのが、私たち支援をする側の方にとっても、県労連に集結する仲間にとっても誇りであり、確信です。ひとりひとりへのサポート体制という点では、以前から私たちは防府市の縫製会社での中国人研修・実習生の賃金未払い問題に対して雇用と生活を守れと支援してきた経験もあり、今でも毎月、お米や野菜など生活物資がマツダ原告団に寄せられるなど様々な支援が寄せられています。
昨年末には「ぜひ原告の１７名の人たち全員にミカンと餅を配りたい」という話があって、その人はミカン農家に自分たちで捥ぐから安く提供してほしいと掛け合ってくれ、急遽原告がミカン狩りに行って、お餅と併せて１２月２９日までに原告全員に届けたのです。遠くにいた仲間から「届いた。涙が出るほど嬉しかった」と連絡が来ました。
また、毎週土曜日の駅前での宣伝・署名行動は、継続してやっているので様々な反応があります。毎回、約１時間で約１００人の署名が集まります。なかには「自ら派遣を選んでクビを切られちゃったのだからしょうがない。自己責任だ」と言う人もいますが、「頑張って」と温かい声援が毎回寄せられる。１２月２４日の昨年最後の宣伝で天草出身の原告が、防府市内の天草出身のご婦人と偶然出会った。同郷だと、そのご婦人が激励してくれた。実は、その原告はずっと「引きこもり」のような状況であったのですが、すごく元気をもらった。たたかうことによって自分たちの労働者の権利や自覚を確信にし、集結が出来つつあるなと感じました。
冊子「前衛」４月号
座談会 「『国際競争力』を口実とした新たなリストラ・非正規切りに国民的反撃を」より
