全国ユニオンは4月1日、震災に伴う派遣切り・解雇・無給休業問題について厚生労働省交渉を行いました。

すでに出ている通達と重複する部分もありますが、主な回答を掲載します。



1.震災に伴う休業について


・震災により直接の被害があった場合の無給休業は、雇用保険失業給付の特例措置の対象となり、直接の被害がなかった場合の休業は、労働基準法26条の休業手当の支払義務の対象となる。

そこに『すき間』ができてしまうということについては、今日『すき間を作るべきでない』という意見をもらったので、持ち帰って検討したい」

・計画停電以外の時間帯(計画停電前後の時間帯を含む)は原則として休業手当の支払義務がある。計画停電の時間帯についても、労働基準法26条の休業手当の支払義務がないからと言って、できるだけ自主的に支払ってくださいとは言える。

2.以下は雇用保険失業給付特例措置の対象か、休業手当の支払い義務の対象か?


1)震災に起因する断水や計画停電による休業 = 原則として休業手当の支払義務

2)震災に伴う部品や原材料の調達困難による休業 = 原則として休業手当の支払義務

3)震災に伴う顧客減、売上減を理由とする休業 = 原則として休業手当の支払義務

4)事業所施設の破損が原因の操業困難による休業 = 原則として雇用保険特例措置

5)避難地域に事業所があることによる休業 = 原則として雇用保険特例措置


3.震災を理由とする解雇や雇い止めの防止について

・震災を理由にすれば解雇や雇い止めが無条件に認められるものではない。



4.震災を理由とする派遣切りの防止について


・派遣先の契約解除も無条件にはできない。派遣先に対しても派遣契約の継続を求めている。

・しかし、民民の契約(民間同士の合意に基づく契約)なので、派遣先指針に基づく周知はできるが、強制力をもっての指導は難しい。

・絶対あってはならないのは、派遣労働者の雇用が失われること。


5.震災を理由とする内定取り消しの防止について


・解雇や雇い止めと同様に、内定取消も震災を理由にすれば無条件に認められるというものではない。


6.業務上災害休業中及びその後30日間、産前産後休業中及びその後30日間における震災を理由とする解雇の防止について

・震災が起こったからといって、労働基準法19条1項但書後段(「天災事変その他やむを得ない事由のために事業の継続が不可能となった場合」)の解雇制限の除外が認められるわけではない。天災事変という要件だけでなく「事業の継続が不可能となった場合」ということを満たさなければならないということをしっかり監督指導する。

7.震災に伴う解雇予告のない解雇の防止について


・労働基準法20条1項但書前段(「天災事変その他やむを得ない事由のために事業の継続が不可能となった場合」)の解雇予告の除外についても、震災が起こったからといって直ちに認められるわけではない。天災事変という要件だけでなく、「事業の継続が不可能となった場合」ということを満たさなければならないということをしっかり監督指導する。


8.被災により失業した労働者の雇用保険手続きの円滑化について


・避難等により住居を管轄するハローワークに出向くことが困難な場合については、避難先を管轄するハローワークで雇用保険手続きを認める。

・雇用保険被保険者資格があるにもかかわらず、未加入だった労働者について遡及加入の手続きを迅速に進める。

・津波や避難等により給与明細などがなく、就労していた事実の確認が困難な労働者の遡及加入について柔軟に対応する。


9.失業給付受給期間の延長措置について


・2ヶ月の個別延長給付を行っているが「もっと長い期間を」という要望については、議員からも要望が出ているので検討する。


10.未払賃金立替払制度による支給額の上限や支給率(8割)、支給要件を撤廃または緩和について

・立替払いの支給要件については、福島の避難地域など、なるべく弾力的に認定する。

・倒産の認定についても弾力的に認定する。例えば、事業所が津波で流されてしまったというようなケースについて、事業の再開の見込みがあるとは認定しない。



11.就業中または通勤中に被災し、行方不明となった労働者の労災認定について

・津波等で行方不明となった労働者については「3ヶ月」かそれより短い期間で死亡と認定するよう考えている。



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【関連リンク】
・厚生労働省:計画停電時の休業手当について
 
http://www.mhlw.go.jp/bunya/roudoukijun/other/110316.html

・厚生労働省:災害時における雇用保険の特例措置について(PDF注意)
 
http://www.mhlw.go.jp/bunya/koyou/dl/koyouhoken07.pdf

・厚生労働省:
 平成23年東北地方太平洋沖地震に伴う労働基準法等に関するQ&A(第1版)
 
http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/2r98520000015xei.html