安堵町歴史民俗資料館を訪問した時に館内を回っている
地元の人が集まって灯心ひきの教室が行われていました。
毎週月曜日、午後から集まって灯心ひきの練習をされているようです。
その部屋にかかっていた長くひかれた灯芯を乾燥させているものです。
(「安堵町歴史人属史料館館内ご案内」より)
安堵町は大和川、富雄川、岡崎川を寄せて流れる地に位置しています。
低泥地の泥田(どた)と呼ばれる排水の悪い土壌を利用して、
江戸時代中期ごろから灯芯用の藺草(いぐさ)が栽培されていました。
藺草は、米の裏作として秋11月~初夏6月の間に作られ、
人々は稲作地をうまく運用していたのです。
また、身近な現金作物として安堵町全域で生産され、
灯芯の一大生産地となっていたのです。
よく水に浸した藺草を「ひき台」と呼ばれる道具の刃で外皮をひき裂き、
”ずい”を切断することなくひき出します。
ひき出された灯芯は1メートル内外の長さがありますが、
これらを一束にまとめて結び、吊るして乾燥させて出来上がります。
現在では、寺社の灯明用、墨作りの採墨用灯芯、茶事の灯り用の長灯芯、
和ろうそくの芯としての需要が主要なものになっています。
私もチャレンジしてみたのですが、生来の不器用な性格のせいか
3センチほどしか取り出すことができませんでした。
一緒に行かれた方は器用に器具を扱い
こんなにもたくさんの”ずい”を取り出しておられました。
同じ初心者でも大違いです。
灯芯売上帳や灯火史年表などの資料も展示されています。
この教室は案町の伝統産業である灯芯作りを絶やすことなく後世に伝えていくために
ご近所の方たちが集まってお互いに講習をしているのだということでした。
地域の伝統産業を絶やさないためにはこうした努力の積み重ねが大事だなと思いました。
今回教室におられたお母様方の暖かいご配慮によりまして、
灯芯ひきという貴重な体験をさせていただきました。