香水 ①  【ユンジェ小説】 | 小鳥のさえずり --永遠のユンジェ--

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ユンジェと5人が大好きです。

小説は①からリンクをたどってね。
たどらないと読めないかもです。

古い記事は「覚え書き倉庫」になってて、
その日に書いた記事ではありません。

ゆっくりしていってね♪
アメンバ申請は、18歳以上です~

【ユンジェ小説】






香水 ①








「兄さん、香水変えたの?」


収録が予定よりも早く終わった夜、
先に宿所に戻って、
リビングのテーブルでジュンスと通信ゲームをしていたユチョンが、
コートを脱いでいる僕を振り返らずに、言った。


「え?香水?変えてないよ。」

「ふうん・・・」


僕は、答え終わる前に、ユチョンの質問の隠された意図に気づいた。

気づくが、答えてしまったからもう遅い。
僕は、とっさに上手に嘘をつくようなことには慣れていない。
自分がそういう点ではかなり不器用な男だと知っていた。
だから、そのまま黙っていた。


それから僕は、少し不自然な動きだとしても、
あえて遠回りしてユチョンのすぐ後ろ側を通って
バスルームに向かう。


ユチョンは背中を向けてゲームを続けている。


突然「あ、ああ~!」とジュンスが雄叫び、
ゲームに勝ったらしいユチョンを指差して
「ずるいよ~!」だの
「ひきょうだ~!」だのと騒ぎ立て、
ユチョンもにぎやかに言い返す。


むこうの壁際のソファのチャンミンが顔を上げて、
表情を変えずに視線を下げ、
再び本を読み出した。


「明日も早いから、そろそろ寝ろよ」


3人を均等に見やって声をかけてから、
リビングを抜けた。


どうやら、2人の弟には気づかれなかったようだ。








香水か・・・気をつけなくちゃ。




いま自分がまとっている香りは、移り香だ。
それほど強くはないはずだ。


でも、鼻をくんくんさせると、
狭いバスルームの扉を閉めたからだろう、
あざやかに匂う。


この香りが、
ジェジュンの愛用の香水だと、
弟たちは皆んな知ってる。


だから、いち早く気づいたユチョンは、警告してくれたのだ。


“無用心だ”と。


“弟たちに気づかれるな、心配をかけるな”と。








僕は、熱めに調節したシャワーを頭から浴び、
ガシガシとこすった。

まだ感覚が強く残っているからだを意識すると、
甘く、苦しく、せつなく、
強い感情が湧き上がってくる。

僕は今日の収録後の数時間を思い返した。













明日、ソウルから戻ることになってるマネージャーの代わりに、
TV局側と放送の打ち合わせをするからと、
先に3人を帰した。


でも実際は、打ち合わせというほどもない、
ほんの2~3の確認点があるだけだ。


だからすぐに局を出て、
3時間、いや4時間は、怪しまれずに自由に使えるだろう。


まずはどこかで軽く食べながら飲もう。


ジェジュンは、行きたい店があるかな?聞いてみよう。


ホテルはどこにしよう。
TV局の近辺では、思い当たる建物がない。


でも、やはりこういうことは男の僕が決めなくちゃ・・・って、
“彼”も男だけどな。




ああ・・・僕、なんか、ソワソワしすぎかな?









僕とジェジュンは、この異国で、そういう関係になった。


でも、合宿所で5人とマネージャーが同居している状態で
僕たちが2人きりになるのは、とても難しいのだ。


実際、ジェジュンのルームメイトのユチョンには知られてしまった。


だから・・・今日得たこの数時間は、とても貴重なのだ。




それなのに。










パーカーのフードを深々とかぶり、
大きめの黒いサングラスをかけ
バッグを下げて、
帰り支度のジェジュンが近づいてきた。


Bスタジオからエントランスに抜ける廊下は、
まだ関係者達が行き交っている。


さっきまで打ち合わせしていたADさんが、
急ぎ足で通り抜けながら挨拶をした。


そんな中、全身が黒っぽく目立たない格好のはずなのに、
ジェジュンのからだは
まるで発光してるように際立って人目を引く。




「ユノ、あのね」

フードとサングラスに隠されていない
彼の陶磁の顔の下方で、
うすもも色のくちびるが動き、
ため息のように僕の名前をもう一度呼ぶ。


ただそれだけで、ぼくの動悸は高まり、息が速まる。


誤魔化すように、

「あ、ジェジュン、こっちも、もう終わったよ、タクシーどうする?
外で拾う?呼んでもらう?」と一気に言った。



ジェジュンがちょっと困ったような表情をする。

「あのね、Aさん達がご飯に行こうって。
 ユノ氏も呼んで来いって。

 少し・・・その・・強引なんだよ、どうしようか」



「え~、そうなの?」



ああ、またか。


マネージャーがいれば、上手に断ってもらえるのだが、
ジェジュンは実によくこういうお誘いを受ける。


生来のサービス精神でニコニコと場を和ませ、しかも低姿勢。
誰にでも好感を抱かれるし、年長者にも可愛がられる。


言葉さえ不自由な外国で成功したいアーティストにとって、
TV界の重鎮・Aさんのような共演者に気に入られるのは、
特にありがたいことではある。


しかし、今夜の僕たちには悩ましいお誘いだ。



「じゃ、ご飯だけ付き合って、明日早いからって抜け出そうか」


「うん、そうだね。」


ジェジュンがサングラスをはずしながら、
ほっとしたような笑顔を僕に向ける。


そして小さく舌を出して、ゆっくりとくちびるをなめる。


僕の視線が彼の舌の動きを追うのを、
彼は見てる・・・はずだ。


彼のくちびるから瞳へ、僕の視線がすばやく動く。


ほら、やっぱり見ていた。


ジェジュンのやや茶色がかった虹彩の中央の瞳孔が
大きく開いて、濡れたような輝きを放っている。



僕たちは息を止めるように見つめ合って、
互いの瞳に自分の姿が写っているのを見る。










②へつづく