5月5日。この日は、伴大介さん出演の舞台『オクトの樹』 千秋楽を観劇。つまり、伴さんの生演技を直に見に行ったことになります。

 伴さんの舞台は、かなり久しぶりです。その前は'06年4月に『ひとり芝居』というのをされたそうなのですが、当時の私はネット環境もなく、メールでの通知が主流となってからは伴さん側からの情報が、いっさい入ってこない状況だったのです。
 よって私が『ひとり~』を知ったのは、その1年後という残念な過去があります。

 むかしは劇団員だったとはいえ、私らが知る伴さんというのは映像の人という印象しかないですからね。はたして今後もあるのかどうかわからない、舞台での伴さんの姿を目に焼きつけておかなければいけません。

 しかし映像と舞台では、おそらく芝居の質が違うんだと思う。ここで伴さんが、どういう演技を見せてくれるのかという、期待と不安が入り混じったような気持ちで会場へ向かいました。

 出発直前に伴さんのインタビュー動画をみつけたので、見ときました。当ブログでも紹介したかったのですが、残念ながら非公開となってしまってるので断念します。

大正生まれのブログ

 場所は池袋の「あうるすぽっと」という会場。私が行ったのは、2日からおこなわれた公演のうちの千秋楽。つまり最終日にある2公演中、2番目のやつ。最後の最後なわけです。
 この回には、伴さん会での常連メンバーが10人以上も来場していました。そして、なかには2回も訪れたという方も複数名。ツワモノです(笑)。

 会場へ入る。豪華だ。私はこれまで数えるほどしか観劇してはいませんが、ここはいままで行ったなかでは飛びぬけて大きい。客席はほどよく埋まり、盛況といっていい入りだったと思われる。
 知った顔が何人も来ているとはいえ、指定席ということもあり座る席はバラバラ。でも、むしろこのほうがいい。
 私は前から2列目の、ほぼ中央にて。B-12の特等席だ。ここなら睡眠不足でも眠くはならないだろう。私の前(A-12)に座っていた方が、じつは伴さん会メンバーのキムラさんだったことを後になって知る。

 さて開演。これまで私が観てきた会場とは規模が違う広さのため、台詞のある出演者はワイヤレスマイク着用のもよう。
 あれ、登場人物いっぱいいるぞ・・・。まだ出てくるよゾロゾロと。覚えきれるか心配になってきた。
 衣装も仕掛けも、やけに豪勢に見える。ちょっといままでとは違うなぁ。しまいには、はたして皆さんにちゃんとギャラが行き渡るんだろうかという余計な心配までしてしもうた(笑)。

 さて全体的な内容につきましては、私ごときの観劇初心者がレビューできるほどのアレは持ち合わせておりませぬため書くのは遠慮します。
 というか、書けません。書き方がわからない(笑)。なので、そのへんは前日にお越しだったという唐沢俊一さんの「裏モノ日記」 でも読んでいただくとして、私はどうでもいいこと担当ということにさせていただきます。

 言えるのは、ファミリーで楽しめる冒険ミュージカルであることで。印象としては唐沢さんも仰せのとおり、往年の東映動画『わんぱく王子の大蛇退治』『太陽の王子ホルスの大冒険』 を彷彿させるような世界観ですね。こういう冒険モノは、とくに小学生くらいの年代なら、すごくのめり込みます。多くの小学生に観てほしくなるような作品です。
 もちろん成人さんでも楽しめる内容なわけで、幅広い層をターゲットにした作品なんだと思います。
 また、ミュージカルといえば私なんかは『シェルブールの雨傘』 を真っ先に思い浮かべてしまうのですが、あの映画のようにすべての台詞がメロディつきというわけではなく、ポイントポイントで歌や踊りになるというタイプのものでした。なお、伴さんは歌ってません(笑)。

 印象的な場面をいくつか挙げていきますと・・・あ、これだと観てない方にはわからないですね。まぁいいや、でも書きますわ。
 いちばん印象に残ったのは、村人を苦しめる雄たけび山の主として登場するオロチ三兄弟のコミカルな場面ですかね。とくに長兄オロチオッポ役の人、やけに巨漢なところがスッゴく気になった。ふぅん、ロバートウォーターマンさんっていうのか。プロレスラーかと思ったよ。
 この三兄弟の場面は、とにかく役者さんが生き生きとしていて楽しかった。痛快だった。私の隣に座ってた女性なんかケラケラ笑ってましたからね。
 そういえば、事実上の主人公であるナナツ王子が強引に少年から青年へチェンジする場面や、ナナツの忠臣・スガメによるコミカルな場面など、ずいぶんと大ウケしていた。てっきり出演者の知り合いの人かと思ったのよ。
 だけど、終演後に提出する感想用紙にある「どこでこの舞台の情報を知りましたか?」の項目に「チラシを見て」にチェックを入れてたのがチラッと見えたんです。何げにフラッと入って観た演劇で、あれだけ楽しそうにしてた観客がいたこと。関係者の方が知ったら嬉しいだろうね。
 で、この三兄弟、後にナナツらのピンチを救援に駆けつけることになる。当初は悪役として登場しながらも改心して・・・という展開は、観る者の心を揺さぶる手法だ。典型的な優等生タイプで感情移入のし難い主人公を差し置き、彼らのほうがヒーロー指数高めになってしまうというオイシイ役どころであった。
 ところで、スガメ役の谷口洋行さん(この方もレベル高そうだった)がオクトパス・ホールド(卍固め)を決めてる場面があったんですけどね。あれって「オクトパス」と「オクト」をかけてたんですかね? 深読みしすぎだろうか。もしこれ読んでる関係者の方がいらっしゃったら、そこんとこおしえてくださいよ。

 他では、踊りのシーンが多かったかな。そのなかのひとり、あおい未央さんという方のブログを発見したんでコメントしてみたら、レポートを書いてほしいとのリクエストがありましたんで、いまこれを書いてる次第なんですわ。あおいさん、見てくれてる? ヾ(・o・)オーイ!
 あおいさんはマホロバ国側の踊り子さん7人のうち、7番目にノッポな女性でした。片や悪役であるダッタン国側の踊り子さんたちはオヘソを出して腹踊り(本当は何というのか知らないが、他にいい呼び方を思いつかない)をしておられた。そのなかで、いちばんいいお腹をしていた女性がスクガミ王の妹とのこと。この妹ことスクナが刺客としてナナツの命を狙う展開にもなるわけですが・・・。
 あのお腹はタダモノじゃないですね。きっと何かやってるんだと思いましたよ。
 また、ダッタン国側の踊り子さんには他にもオヘソへ光り物を埋め込んでる方もおられた。それを見て、てっきり「ははぁ、あそこからビームを発射するんだな」と、またしても深読みしすぎた私はおバカさんでした。

 ではお待たせしました。伴さん、貫禄を見せつけるの巻。
 いやぁ、もうね、これはしょうがないし他の出演者の方々には申しわけないんですけれども・・・格が違いました(笑)。
 正確には、そのように感じた、と書いたほうがいいのかな。なにしろ私、素人の観劇初心者ですからね。
 その観劇初心者が感じたことですけどね。いいか悪いかは別として、やっぱり舞台にありがちな大きな芝居(この表現が正しいのか否かはわからない)は、ときに違和感を抱くことがあるんですよね。たぶん伴さんは使い分けてたんだとは思うんですけど、演技にそれほど舞台舞台って感じさせないものがありましてね。さりげない、といいますかね。
 それでいて存在感も説得力も抜群なんですよ。たたずまいも、目力も。
 当初は正直、舞台をやれる体力とかは大丈夫なんだろうか? と心配しておったのです。体調の悪かった時期も知ってますからね。
 ところが、どうです。

 伴大介、健在!

 これを見れただけでも、かなりの収穫がありました。
 殺陣のシーンもありました。今回のお仕事が決まった時点での伴さんは「映像みたいに、ごまかしが利かないからね」と舞台のこわさを口にされておられましたが、まったく心配無用でした。
 当たり前のことなのかもしれませんが、階段を歩く場面では足もとを見ることもなく、剣を振る場面でも目線は前を向いている。どれもこれも、いちいち絵になる。
 こんなの見せられたら「まだまだできますね」っていう称賛の言葉ですら失礼に思えてしまう。まさに、貫禄を見せつけられた思い。うん、おそれいりました! <(_ _)>

 ラストは大団円。だがここで、ちょっと残念な場面があった。
 出演者の大半が舞台の前側に集まり華やかなフィナーレが繰り広げられようとしてるのですが、それを下から見上げるかたちとなる客席前列からは壁を作られたも同然の様相。その向こう側では何やら素敵な演出がおこなわれているように思えるのですが、見えない。見えないの(苦笑)。きっと客席後方からだと感動的な情景に見えたのでしょう。
 そのかわり我々が座る前列には、上空から金色の紙吹雪が降ってくるという仕掛けを体感できた。最近の流行りでいえば“レインメーカー” っぽい演出といいましょうか。しかも『第32回NHK紅白歌合戦』 で北島三郎が歌う『風雪ながれ旅』の際に降ってきた猛吹雪仕様のものか、ひょうきんベストテン の罰ゲームに近いそれを思わすかのような大量さ加減。
「これ、あとで掃除するんだよな? いや、午前の部があったから、既に今日、いっぺん掃除してるんだよな?」
 そんな心配までしてしもうた(笑)。

 最後の舞台挨拶にて伴さんへバースデーケーキが贈られ、会場じゅうでお祝い。この日は伴さんの誕生日でもあったのです。照れくさそうな伴さんなのであった。

 終演後、ロビーに集う伴さん会メンバーのもとへ伴さんがやってきた。輪になる伴さん&伴さん会メンバー。そこへ後ろから、伴さんとは初遭遇のファンと思しき方が握手を求めにこられた。気さくに応える伴さん。その方は、ものすごく嬉しそうな顔をされてる。
 私らのように年に何度も伴さんとお会いしてると、ざっくばらんな話し方をされますゆえ、ときにこちらが不躾な言動をやらかしてしまい、あとになって自己嫌悪に陥るということもままあります。ですがこのような光景を見ると、いまもって伴さんの神通力は絶大なものであることを思い起こされるようです。
 やっぱり伴さんってレジェンドですもんね。

 そういえば他の出演者の方たちも多くがロビーに出て観客と談笑されてましたが、皆さん小柄な方が多いように見えました。前列のほうで下から見上げてると、怪獣映画のような目線だから実物よりも大きく見えたんだろうね。
 あおいさんもお見かけしましたけど、7番目にノッポな方という程度にしか思ってなかったのに、間近で見ると、とても小さな妖精さんのように映りましたから(笑)。プロヒールによりますと、身長153cm? もっと小さく見えたな。これはいいとして、体重38kgって・・・。ロバートウォーターマンさんに何人入るんだよ(笑)? あ、あおいさん、見てくれてる? ヾ(・o・)オーイ!
 いや、もっと圧巻だったのは初代タマユラ姫(幼少期)を演じた原嶋あかりさんだな。身長139cmですと? あおいさんが妖精なら、原嶋さんは何と表現したらよいのじゃ?
 そういえば当初、タマユラ姫というのはナナツ王子とは兄妹の関係なのかと思っておりましたのよ。幼少期のナナツが本当に子どもさんが演じていたこともあり、タマユラのほうも子どもさんなのかと思いかけてたんですが・・・。
「6歳という設定のわりには、お歳を召しておられるなぁ(すいません、老けてるって意味じゃないです)・・・」になり、すぐに「これは子どもがやる演技じゃないぞ」に変わりました(笑)。
 物語の始まりで、旅立つナナツから「(タマユラが)ぼくの背に追いつくころに帰ってくる」と諭される場面には多くの観客がツッコミを入れていたことでしょう。
 よしだたくろうの『結婚しようよ』を思い出し、相手だって伸びるだろって思った観客の割合は90%。タマユラが大林素子な体質で、あっというまにナナツの身長を追い越す展開を願ったのが60%。そんなの6歳だったら気づきそうなものを、簡単に言いくるめられただけでなく、けっこう成長してからも信じたままなタマユラ姫は大丈夫なのか? と心配したのがほぼ100%・・・。
 そんなこと考えてる私は屈折してますでしょうか? でもね、ツッコミを入れれるのって、スキのない作品より楽しいものなんですよ。たぶんこれ、そのへんは計算ずくなんだろうな。
 そうそう、ナナツの帰りを待ちわびる原嶋さん演ずるタマユラが、座った体勢で足をパタパタさせてるシーンは「なるほど、考えた動きだな」って思いましたわ。

 ともかくですね、こんなふうに、随所で面白そうな役者さんを発掘するのが観劇の楽しみのひとつでもありますよ。

 その後は伴さん会メンバー約10名で居酒屋へ。キャプテン(?)のヱビス星人さんの後ろをゾロゾロとついていく私ら。ところが、思わぬ難航をきたすハメに。
 混雑を回避するためか、横着(?)して2階からエレベーターへ乗り込もうと試みるも、これが災いする。ゲームセンターの店内を通過しないとエレベーターまで近づけないという険しさ。しかも1階から乗ってきた客がギュウギュウで乗れやしない。階段を歩こうとしたら非常口の扉に鍵がかかってて、それも無理・・・と、なかなか店の入り口までたどり着けないのだ。
 結局、元の場所(1階)へ戻り、ふつうにエレベーターで行くことに。こんなだから、オクトの樹をみつけるのと同じくらいの時間を費やしてしもうた(笑)。
 それでも、こういうグダグダなところも楽しんじゃえ! という発想ができるのも伴さん会メンバーの強いところじゃ。今後とも、その調子でお願いします。

 楽しい飲み会が始まりました。思えばそこは十数年前、私が初めて伴さんを囲んでの会合に出席したときと同じ場所だったのではないかと思います。店名は変わってましたけど。
 しかし、店内の衛生面の悪さに一同、ツッコミ放題。なかでもコンロの端に残っていた、前の客が落としたものと思われるウドンの欠片の存在感は絶妙であり、ちょっとした大喜利に発展してしまうほどの面白さがあった。
 こういうのも楽しんじゃえ! という発想ができるのも伴さん会メンバーの強いところ・・・なのじゃ。

 やがて伴さんも駆けつけてくださった。ひと仕事終えた感あふれる、いいかんじのお顔です。じつはこの居酒屋を選んだのは、そのあと出演者が打ち上げにくる店ということで、早めに劇場を出た伴さんも立ち寄りやすかったという理由があってのことだったのです。
 あらためて「お誕生日おめでうございますー!」の乾杯。それは、さながら「伴さん会増刊号」といった様相。伴さんの生芝居を観劇し、伴さんの誕生日をお祝いするという、ファンにとっては何とも至福な時間となったのです。
 例によって伴さんによる、ぶっちゃけ裏エピソードが披露される。また、伴さん演ずるクガオリ王が、剣をいちど振るだけで複数の敵が倒されてしまうという「まぁ、そういうことにしておけ」的な、お約束な演出にも「あれ、(剣が)当たってないんだけどね」と、触れてはいけないところに自らツッコミを入れるというタブーを口にして笑いが起こる。最高です。
 1時間ほどして伴さんは、出演者の皆さんがいると思われる打ち上げの席へと移動して行かれました。

 また、こういう機会がほしいなぁ。
 それにしても、演劇って、観れば面白いんだけど、それを誰かに伝えるのって難しいですね。

 あ、帰りは月が、やけにクリアに見えました。
 そういや、あの晩はスーパームーンだったっけ。 満月