いまよりもテレビの力が強かったころ。番組を観た視聴者の何%かは、それに多大なる影響を受けた人たちがいました。

 人造人間キカイダー。

 この特撮番組屈指の人間ドラマに心を奪われた人たちのうち、ある者は漫画や映像に走り、ある者はアクターに、そしてある者はコスプレやメカニックに走りました。
 今回はそのなかでも、メカに目覚めてしまった方々による、壮大な夢の実現がおこなわれた現場を目撃してしまった私が書きますレポート記事です。

 ・・・と言いたいところですが、例によって伴さん会の新年会で、いろいろとやらかしてくれたI氏も終始一緒でしたので、やっぱりI氏が中心の記事になってしまいます。トホホ・・・。 (ノ_-。)


・まずはコチラ↓の動画をご覧ください。


・サイドマシンとは?


 4月1日。この日は“サイドマシン撮影会”のため、小河内ダム(奥多摩湖)へ行ってまいりました。
 小河内ダムといえば特撮好きの方々には言わずと知れた、ロケ現場としては超有名な聖地ともいえる場所ですね。『キカイダー』においては毎回、エンディングの歌のところでキカイダーがサイドマシンを滑走させているシーンが流されていたほか、クランクインして一番最初の撮影がおこなわれたといわれるジローの初登場シーンが有名です。
 で、そこへファンの方たちによる自作のサイドマシンを姫路からわざわざ運び込み、40年前の場面を再現、さらにみんなで撮影会をしちゃおうという粋な企画だったわけです。
 ですが、そこに至るまでは気の遠くなるような道のりだったことは想像に難くない。おそらく最も困難だったのは、東映さんから許可をもらえるまでのハードルが、お金やマシン作成の手間暇がかかる以上に高かったのではないでしょうか。
 まぁ、結果的にはダムで走らせないのを条件に許可が下りたみたいですが。

 これは営利目的ではありません。興味のない人にとっては、しょーもないことかもしれません。何の役にも立ってないかもしれない。
 しかし私は、どっちかというと、しょーもないことに全力を注ぐことのできる人たちの味方でありたい。だから応援に駆けつけたのである(情報を知ったのが、プロジェクトが始まってからずいぶん経ってからでしたので、何のお手伝いもしてませんけど)。

 まず、数週間前からI氏をお誘いした。前にも書きましたとおり、I氏の情報源はラジオのみ。テレビもネットもありません。あとは携帯電話だけ所持しています。
 本来なら情報記事をコピーしてメールでもすれば簡単なのですが、彼はメールもやらないとかで、連絡するには通話くらいしかありません(さすがに手紙は面倒だ)。ですが電話で話すだけでは聞き違いがあったり、確認のために何度も電話し直したりで、そのための通話料もバカになりません。だから、なるべく遠慮したい手段なのですが仕方ないです。
 既にI氏は新年会でこの企画を聞いていまして、そのときは「ぼくがクルマ出します。ぼくのクルマで行きましょう!」と意気込んでおりました。稼いだ収入のほとんどを注ぎ込むほどの愛車で奥多摩へ乗り込もうと思い描いていたようです。ところが、数日前にかけた電話でのこと。I氏が口にしたのは・・・。
「クルマのクラッチとエンジンが壊れました」
 へ?
「だから、ぼく行きません」
 ちょっと、ちょっとちょっと! ヾ(- -;)
 あのね、I氏を誘ったのはクルマ目的じゃないですからね。そんなの、べつに期待してたわけじゃないんですから。
 それに、もし終わったあとで飲み会という流れにでもなれば運転は・・・。
「飲み会? ぼく行きます!」
 こらこらー、今回は飲み目的じゃないぞ! それに、本当に飲み会になるかどうかは、そのときにならんとわかんないわけで・・・。
 とにかく4月1日、I氏はスケジュールを空けとく運びになりました。
 
 あとで聞いた話ですが、I氏の愛車は2004年の誕生日に新車で納車し、現在までの走行距離が18万㎞。キズ・凹み・修復だらけで洗車をいっぺんもしたことがないとのこと。
 I氏は得意そうに語ってくれるんですけど、私はクルマの知識には詳しくないので、それが何を指しているのかスゴイことなのか、さっぱり理解できないんですが・・・まぁ、いちども洗車したことないというところだけは、なんとなくスゴイんだろうなとは思いましたけど。

 本番当日の直前、ネットで電車の時刻を調べた私は再度、I氏へ架電することに。
「Iさん、最寄り駅を7:27の電車に乗ってください。で、○○で乗り換えて・・・△△の駅で私が乗りますから。そうだ、最後部の車両に乗っててくださいよ。そしたら拝島から8:27発の快速に乗れば・・・」
「わかりました。ぼく一番後ろの車両に乗ってますから」
「でも、もしもどっちかが遅れたりしても、待たずにそのまま現地へ向かってくださいね」
 ・・・まぁ、そんなやりとりでした。

 そして当日。私は予定どおりの電車に乗り、乗り換え駅ではI氏と合流するべき電車の最後部へ突入いたしました。
 ジャ~ン。わし、参上!
 ・・・あ、あれ、I氏がおらん。
 間違えて先頭車両へ乗ったのか? 私は8両編成の車内の8両目から1両目までを歩いて探しました。
 おらん。乗り遅れたのかな? まあいいや、行き方はわかるだろうから、ひとりでも来れるだろう。
 ちなみに私、携帯電話は持ってないです。しかもI氏の電話番号を控えてくるのも忘れてしまいました。もしI氏が現れなくても、もう知りません。

 拝島の駅には8:03に着きました。快速は8:27発なので、少し時間があります。
「こうして待ってるあいだにI氏、来ないかなぁ~」
 そんな期待などしてもダメです。なにしろネットで最も効率のよい時刻を調べたのですから、それより後になって同じ方向から電車が来るわけはないのです。
 なので、諦めて週刊プロレスでも読むことにしよう・・・・・・ん、いま左から右の方向へ動いた物体はI氏か? 間違いない、あのボロボロのGジャンを着た物体は・・・あの、地図で見たら深海を表すかのように真っ青なジローのGジャンに対し、最も浅い大陸棚を表すかのような色の薄いGジャンを着ているのは、どこからどう見てもI氏なのでR!
「おはようございます」
 改札を抜けてから、やっと声をかけた私に気づいたI氏。どうやらI氏に伝えた時刻のものと私が乗った電車では1本ずれていたらしく、I氏はちゃんと最後部車両へ乗って来たらしいのだ。今回は私側のミス。でもネットで調べたのに、どうしてこういうことになったんだろ? まぁいいや。

 ところで、現地では食事がとりにくいだろうとの情報がありました。私は朝からマルシンハンバーグを焼き、ニンジンと春菊をそえた自前の弁当(費用:100円くらい)持参で来たのですが、そのことをI氏には伝え損なっていたんです。
 なので、駅に売店もある、いまのうちに調達してみては? と提案してみました。
「いや、いいです。ぼく、これだけで凌ぎますから」
 I氏がポケットから取り出したのは、ラムネ菓子だかフリスクだかわかんないやつのコーラ味。・・・いいや、ここは突っ込まないでおこう。
「食べますか?」
 そんな! 弁当持参の身でありながら、ラムネ菓子だかフリスクだかわかんないやつしか持ってない人の貴重な食事(?)をいただくわけにはいきまへんがな。

 ・・・そんなわけでI氏との合流は成功。いざ奥多摩へと向かいます。

                                <中編へつづく>