むすめふさほせ | パパ・パパゲーノ

むすめふさほせ

 NHKのドラマで、松坂慶子が和歌の師匠になって、江戸時代の江戸の下町で、歌カルタの弟子を育てるというのを放映しています。その中で、「むすめふさほせ」という「謎のことば」を弟子に残して去る、いったい何だろう、と話が展開しました。小倉百人一首をカルタにして勝負するゲームは、今も正月を中心に、日本各地で行われているでしょうが、始まりは江戸時代のようです。


 いくら時代が江戸に設定されているとはいえ、「むすめふさほせ」が「謎」であったはずはないでしょう。この字で始まる和歌がそれぞれ一首ずつしかない、いわゆる「1枚札」のことを指すからです。家族で、カルタ取りをする場合、子どもは、1枚札を覚えて、それだけでも取れるように耳をそばだてて身構えているし、親や、おじおばなどは、手加減して、小さい子に取らせるようにしたはずですから。


 ただ、なぜ「むすめふさほせ」という順番にしたのか、それには諸説あるようです。「娘、房干せ」という具合の、語呂のよさを誰かが考えついたもののようです。


 以下の七首がそれです。有名な和歌も、一読しただけではよく意味の取れない歌も、混じっています。「住の江」の歌は、「よるさへ」が「寄る」と「夜」の掛詞になっているのがミソです。


 村雨の 露もまだ干(ひ)ぬ 槙の葉に 霧立ちのぼる 秋の夕暮 

                            (寂蓮法師)


 住の江の 岸による浪 よるさへや 夢の通い路 人目避(よ)くらむ 

                            (藤原敏行)


 めぐり逢ひて 見しやそれともわかぬ間に 雲がくれにし 夜半の月かな                  

                            (紫式部)


 吹くからに 秋の草木の しをるれば むべ山風を 嵐といふらむ 

                            (文屋康秀)


 寂しさに 宿を立ち出でて 眺むれば いづこも同じ 秋の夕暮

                            (良暹法師)


 ほととぎす 鳴きつる方を 眺むれば ただ有明の 月ぞ残れる

                            (後徳大寺左大臣)


 瀬を早み 岩にせかるる 滝川の われても末に 逢はむとぞ思ふ

                            (崇徳院)


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