[本] 人間の事情 / 人類と気候の10万年史 | そっとカカトを上げてみる ~ こっそり背伸びする横浜暮らし

そっとカカトを上げてみる ~ こっそり背伸びする横浜暮らし

大きな挑戦なんてとてもとても。
夢や志がなくても
そっと挑む暮らしの中の小さな背伸び。
表紙の手ざわりていどの本の紹介も。

相互読者登録のご期待にはそいかねますのでご了承ください。



どうやら私たちはかなり稀な暖かい時期に生きているようです。

近頃、天気予報の表現が変わったこともあり、
「〇十年に一度の」、「これまでに経験したことのない」
といった言葉をよく耳にします。

ここ100年、産業や社会の発展と軌を一にして気温は上がりました。
温暖化とまれな天候を結びつけて語られる場面もよく目にします。

一方で

お気に入り「アースダイバー」(中沢新一著)を読み、
5、6000年前(縄文時代)海面はいまより4~5m高く、
入江は今の陸地の奥まで食い込んでいたことを実感しました。
(わが家のある場所は海!?)
その頃に比べれば、今は気温も海面も下がりました。

地球は温暖化しているのか、それとも寒冷化しているのか、
時間軸というものさしの当て方ひとつで見え方が変わります。

気候変動と暮らしについてもっと考えたいと思っていたところに、
もっと長い時間軸をあてた、おあつらえ向きの本を見つけました。


   ◆      ◆      ◆

 

 

この本に三重に驚かされました。

(1)「頻繁に・突然・激しく」気候は変わってきた
(2)「1年刻み」に気候の変動を検証できる
(3)「地道」な調査が検証を実現した

気温の変化の推移を、
まず、130年ほど前から今からを20年毎の目盛をあて、
次は一気に、5億年前からを1億年毎の目盛へ。
そこから、500万年から100万年の目盛、
80万年前から10万年の目盛で、説明とともに示しています。

地球が太陽の周りを回る楕円公転軌道と地軸の傾きから、
地球は10万年毎に氷期を迎えてきました。


   ◆      ◆      ◆

著者たちは、福井に残されていた1年毎の区切りがわかる地層から、
7万年まえから現在までの気候変動の兆しを1年刻みに追っています。

地層を壊さずに湖の底から取り出す試行錯誤。
変動の兆しを知るための花粉の量など指標探し、分析、推測。

世界のトップランナーの研究者たちの協力を得て進められる、
ダイナミックな研究はチマチマとした作業の積み重ねでした。

そんな努力の結果、
11,600年前に数年間で7℃の気温上昇があったこと、
7万年の間に、海面は100mも上下したこと、
毎年気温が激しく変わる期間が何百年も続いたことがあること、
といったことが具体的な時間軸の上で判明しました。


   ◆      ◆      ◆

そんな気候変動の背景をもとに、
  アフリカを起源とする人類が広範囲に移動した訳、
縄文時代の暮らしの豊かさ、
  気候変動と農業の始まりと普及、食料備蓄、
古代文明の滅亡理由 etc. 気候と人間の暮らしの関係を推測する章は楽しさ満載です。


   ◆      ◆      ◆

気候変動が常であれば移動し、温暖化して安定すれば定住し、
人は、その時代に最適な暮らしを選択してきたのですね。

今の農業・工業・居住・社会の基盤も、
いわば、ここ100~200年の地形と気候を前提に最適化されたもの。

つきつめた最適化は、前提が変わると不都合が起きます。
温暖化に限らず、寒冷化や雨量も極端な変化は困ります。

気候の変動自体に善悪があるのではなく、
暮らしにダメージを受けるという人間の事情で困るのですね。



[end]


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