ものには取り合わせというか、相性というものがあります。
この組み合わせは、いかがなものか、と思う類いです。
プリズン[Prison]: 刑務所、拘置所
ホテル[Hotel]: ホテル、旅館
どちらも寝泊まりするところといえばそうですが・・・・・・。
「奥湯元あじさいホテル」というちゃんとした名があります。
なのに、地元ではみんな「プリズンホテル」と呼びます。
◆ ◆ ◆
プリズンホテル〈1〉夏 / 浅田次郎 (集英社文庫)
文庫 605円、Kindle版 486円
1993年刊、2001年文庫化 |
作家木戸孝之介は極道小説で売れっ子になりました。
それまで遠ざけてきたヤクザの叔父仲蔵に、父の七回忌で
自分が所有するホテルに招待されました。
訪れてびっくり。任侠団体専用ホテルだったのです。
◆ ◆ ◆
その筋の男や片言の日本語を話す従業員の他、
ホテル・チェーンから赴任してきた実直な支配人、
若くして名を知られた有名シェフ、
そこに勤める人も訳ありです。
任侠団体専用とはいえ、一般客も利用できます。
まあ、任侠団体専用としっていて予約する人はいませんが。
熟年離婚を目論む妻が予約した定年後の夫婦、
心中を目論む一家4人、謎の独り客。
一般客まで訳ありです。そりゃあそうです、小説ですから。
◆ ◆ ◆
浅田次郎の作品を読む時は、安心して作品に身を任せています。
笑って、ハラハラして、泣いて、ちょっと切なくなります。
生真面目さを滑稽に描くことが基盤になって
他の要素も際立ってきます。
作者の独り善がりなギャグでは読者は置いてきぼりになります。
物語の設定の中での独自性に
読み手が共有できる普遍性が包まれています。
誇張もここぞという場面で使われてこそ効果があります。
この小説では、予定調和と知った上でも楽しめました。
◆ ◆ ◆
上質な喜劇はいいですね。
この小説、はじめから夏秋冬春の4部作を全巻買いました。
喜劇に飢えて、客席に着けば
すぐに浅田劇場が幕開けできますからね。
[end]
資料:Weblio英和和英辞典
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