ふたつの孤独 ~ 「セイジ」 | そっとカカトを上げてみる ~ こっそり背伸びする横浜暮らし

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大きな挑戦なんてとてもとても。
夢や志がなくても
そっと挑む暮らしの中の小さな背伸び。
表紙の手ざわりていどの本の紹介も。

相互読者登録のご期待にはそいかねますのでご了承ください。




二人の不器用な男がいました。
それぞれ異なる世界(短篇)で暮らしていました。

何を考えているのか、何を大切にしているのか、
選んだ末の暮らしや振る舞いなのか、単なる成り行きなのか・・・・。
傍で理解できる人がほとんどいません。

二人は、純粋なのでしょうか。それとも考えなしなんでしょうか。


◆      ◆        ◆

 

セイジ (光文社文庫) セイジ / 辻内 智貴 (光文社文庫)
535円 Amazon
2002年刊、2008年文庫化

 


「セイジ」と「竜二」の2篇が収められています。

§セイジ

学生最後の夏、「僕」は自転車で旅をしていました。
たまたま国道475号沿いの寂れたドライブイン"HOUSE475"に寄り、
その店を預かる青年セイジと出会います。

誰もセイジの過去を知らず、本名も不明。
口数が少なく、すぐふらりと店を空けるセイジにどこか惹かれ、
「僕」はそこでひと夏を過ごします。
その夏、セイジは奇跡を呼びよせます。

§竜二

故郷を離れて東京で暮らす40歳の「私」は、20数年ぶりに、
街でギターを弾き歌う幼馴染みの竜二と偶然出会います。
いくつになっても兄の影にわだかまりをもつ竜二は、
どうやら定職に就かずに暮らしていました。


◆      ◆        ◆

人の思いや人の振る舞いのもたらすものが、
見えすぎる故に、自分や人のできることの限界を悟った孤独。
一見、無気力にみえるセイジの世界はそう見えました。

父の死去で大学に進学せずに自衛隊に入隊した兄。
その兄が竜二のために進学資金を準備したにもかかわらず、
竜二は高校を中退して東京に出ました。
ガキ大将の兄に庇護されてきた竜二の独り立ちです。
ガード下での弾き語りも、竜二の独り立ちし続ける姿です。


◆      ◆        ◆

孤独の成り立ちは異なっても、不器用さは同じです。
心は孤独でも、なぜか二人の周りには限られた顔ぶれとはいえ
人が集まります。

セイジも竜二も、
未完成ながらも考えた末に選択した道を歩んでいることを、
説明されなくとも直感的に理解しているのでしょう。
その生き様に蜜の香りを嗅ぎ取っているのかもしれません。

475号は長年かけても一部しか開通していない国道です。



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