時代を映す対話 ~ 「サマードレスの女たち」 | そっとカカトを上げてみる ~ こっそり背伸びする横浜暮らし

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大きな挑戦なんてとてもとても。
夢や志がなくても
そっと挑む暮らしの中の小さな背伸び。
表紙の手ざわりていどの本の紹介も。

相互読者登録のご期待にはそいかねますのでご了承ください。




どうということない場面の対話を多用していながら
洗練された空気が漂う文章が魅力です。イケています。

大恐慌以降の1930年代から第2次世界大戦中および戦後を舞台に
年代順に並べたアメリカ人を主人公とした23篇です。


◆      ◆        ◆

 

サマードレスの女たち (小学館文庫) サマードレスの女たち / アーウィン・ジョウ (小学館文庫)
896円 Amazon、896円 Kindle版
1983年刊「緑色の裸婦」より16編を2016年文庫化

 


表題作「サマードレスの女たち」は、
40代の夫婦が週末をニューヨークで過ごし、
日曜日の朝ホテルを出て中心街を散策する様子を綴っています。

  気をつけて。(略)頸がねじれちゃうわよ。

しばしば行き交う女性を振り返る夫に対する妻の不満です。
二人の対話で倦怠期の刺激にN.Y.を訪れたことがわかります。
バーで飲むことに決めも、店に着くまで二人は無言です。

バーで席をたった妻の後ろ姿をみた夫の独白がいい〆です。


◆      ◆        ◆

こと細かな心理描写はほとんどなく、
ごくありふれた人々のちょとした言動で時代を映しています。

診療費の請求が厳しくない医師を紹介することで、
その家も貧しいことを伝えています。

  今は一九二八年じゃない。


恐慌前の好景気を懐かむことを戒めるほどの厳しさを感じます。
(1918年第1次大戦終結後1929年の大恐慌まで平和と好況の時代)

  何のお話ですか。


パーティーでアラブ人が紹介されたアメリカ人に
好ましくない感情を抱いていることがわかります。

  この頃の若い女はどうも痩せすぎだな。


第2次大戦後の美人のものさしが変わってきたようです。

◆      ◆        ◆

簡潔な言葉で時代を映してしまうなんてカッコイイですね。

私にとっては
時間を経てからも、時おりひろい読みしたくなる一冊になそうです。



[end]


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