「おばあちゃんモノ」は、乱暴に分ければ、
ほっこりとしたおばあちゃん像と、シャキッとしたおばあちゃん像に
二分されます。
どちらもブレがないことは共通。
周囲の人が知らない、恋や若者の死といった秘めた過去が
影をさすのもよくある話です。
なので、この本を買うときには、
何番煎じかに陥らない何かに期待したわけです。
井上荒野ならわざわざそんな小説を書くはずはないとの信頼です。
☆☆☆ ◆
静子の日常 / 井上 荒野 (中公文庫)
¥576 Amazon.co.jp / ¥432 Kindle版
(2009年刊、2012年文庫化)
静子は75歳の女性。夫十三と死別後、
息子の愛一郎、その妻の薫子、孫のるかと4人暮らしです。
小説は、静子とその他の家族が交互に主人公となる
10ページ足らずの28篇が、
三人称でエピソードを積み重ねながら、
時にはユーモラスに、時には切なく書かれています。
そこに絶えず感じるのが、静子の約束です。
☆☆☆ ◆
見合いで一緒になった夫十三との結婚生活をとおして、
静子はある決心をします。自分との約束です。
それを静子は夫に悟られないように努めてきました。
夫との生活に耐えられなくなりそうなとき、
静子は耐える儀式がありました。
入浴前に針の先ほどの量を手首につける香水。
風呂上がりには名残もなくなる香りです。
☆☆☆ ◆
静子は夫の通夜で50年ぶりに酒を口にします。
結婚当初、下戸だった夫が妻の飲酒も嫌うことを感じ、
強いられたわけでもなく、自分で飲まないと決めたのです。
夫十三の死で、静子はひとりの約束から解放されます。
それでも静子が持ち続けている約束ごとが、まだあるのです。
その静子の自分との約束事は、口にすることもないのに、
家族や周りの人の人生を左右します。
それは・・・・・・読まなきゃ。
☆☆☆ ◆
夫との生活から解き放たれた後も続く、
誰にも知られていない自分との約束。
それは信条です。
[end]
*** 読書満腹メーター ***
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