私は毒を効かせた小説が好きです。
潜んだ悪意、皮肉な視線、狡さ、憎悪、わが身を守る言い訳 etc.
善意や常識の中に投じられる毒は、ひと滴が適量です。
この本にはこうした毒が13篇に散りばめられています。
ここでは、毒の持ち主は女性ばかりです。
☆☆☆ ◆
マッチ箱の人生 / 阿刀田 高 (講談社文庫)
(1981年刊、1984年文庫化)
¥483 Amazon.co.jp / ¥540 Kindle
バーのママ奈緒子が列車で隣あわせた女が、
3人にしか配っていない奈緒子の店のマッチを持っていました。
なぜその女の手に?マッチ箱の中に吸い殻があるのはなぜ?
表題作は奈緒子の推理を展開させますが、決め手は毒です。
子どもの教育に対する母の究極の熱意
☆☆初めて愛した男の影からようやく脱する女性の割り切り
☆☆☆深夜に電話で男に救けを求める女性
☆☆独り暮らしの叔母をいたわる若い姪の本心
東京に住む娘夫婦とマンションで同居しはじめた母親の見栄
☆☆☆ ◆
小説の中で毒が魅力を発揮するには、
持ち主と毒の組み合わせが意外でなければなりません。
「ほら、やっぱり」ではつまりません。
反面、持ち主が毒を持つに至った理由には、
なるほどと思わせる説得力も必要です。
公然と頻繁に発揮される毒が小説に登場することがあります。
でも、これは後に出てくる主役の毒の引き立て役です。
毒は、ちらりと、ひっそりと登場してこそ効き目が光ります。
こちらが主役。
秘密には毒の効き目を高める作用があるのです。
☆☆☆ ◆
書かれて30年以上経っても、
いまだ効果の衰えない毒を仕込んだ作者の腕はさすがです。
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*** 読書満腹メーター ***
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