確かに ~ 「桑潟幸一准教授のスタイリッシュな生活」 | そっとカカトを上げてみる ~ こっそり背伸びする横浜暮らし

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大きな挑戦なんてとてもとても。
夢や志がなくても
そっと挑む暮らしの中の小さな背伸び。
表紙の手ざわりていどの本の紹介も。

相互読者登録のご期待にはそいかねますのでご了承ください。



月収3万円以下の男性。
知人の女性の理想像です。今はパリで働いています。
ろくに働かないダメ男じゃなきゃだめなんだとか。

ダメ具合がそこそこだと悲惨さにリアリティを感じます。
飛行機に乗って地上を見ても怖くないのに、
4階建ての屋上から下をみると足がすくむ、あの感覚です。

ダメ男の日々も小説の他人事だと安心して笑っていられます。
今年読んだ本のなかで、最も力が抜けた小説でした。

☆☆☆       

桑潟幸一准教授のスタイリッシュな生活 / 奥泉 光 (文春文庫)
 ¥778 Amazon.co.jp
(2011年刊、2013年文庫化)

桑潟幸一、通称クワコー、40歳独身。
たらちね国際大学情報総合学部日本文化学科准教授。
文学の講義を持ち、文芸部の顧問をしています。

「国際」、「総合」、「日本文化」という大括りな言葉が、
中身の薄さを象徴しています。
そんな大学にクワコーは適材です。

大学の所在地は千葉県権田市。最寄り駅は肥ヶ原駅。
田舎臭さ漂う地名と駅名です。

☆☆☆       

教えても仕方がない教え子を前に教える気にもならず、
☆☆研究するどころかろくに本も読まず、
☆☆☆☆フリーター並みの稼ぎで汲々とする
クワコーの暮らしぶりは「スタイリッシュ」な印象とは程遠いもの。

☆☆☆       


クワコーの研究室は文芸部の部室と化します。

文芸部といっても、村上春樹を読んだことがあれば、
相当な文学通として一目おかれるレベルです。
元プロレス部員の巨漢女子、キャンパス内ホームレス女子大生、
ナースやメイドのコスプレ姿・・・・、とキャラがたつ部員ぞろいです。

ビミョーにそそられます。

☆☆☆       

そうそう忘れていました。
この本はミステリーってことになっています。

クワコーにあてがわれた研究室で毎年起きる4月限定怪事件
(死者まで出たことがある)、
後継者争いの決め手となる手紙の紛失、
☆☆金庫から消えた大切な名簿と教授の元を訪れる謎の女子。

こう書くともっともらしくみえますが、事件もバカっぽいです。

☆☆☆       


スタイリッシュ 【Stylish】 (形動)
しゃれているさま。流行を意識しているさま。

流行 (名)スル
①ある現象が一時的に世間に広まること。特にある型の服装・言
葉あるいは思想・行動様式などがもてはやされて、一時的に広く
世間で用い行われること。

(資料:大辞林)

☆☆☆       


理不尽な低賃金、やる気のない大人、今さえよければという若者、
そんな環境への順応指向などなど、
ここに描かれていることは、いま広まっている思想・行動様式です。

確かに、スタイリッシュ、といえばスタイリッシュです。
そして
作者は、一時的であってほしいと考えているのかもしれません。


[end]


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