当たり前の鎖、当たり前でないことの絆 ~ 「朝が来る」 | そっとカカトを上げてみる ~ こっそり背伸びする横浜暮らし

そっとカカトを上げてみる ~ こっそり背伸びする横浜暮らし

大きな挑戦なんてとてもとても。
夢や志がなくても
そっと挑む暮らしの中の小さな背伸び。
表紙の手ざわりていどの本の紹介も。

相互読者登録のご期待にはそいかねますのでご了承ください。



「子どもを、返してほしいんです」
6歳の養子と暮らす40代の夫婦に女性から電話がありました。
さらに返せないならお金を、と迫ってきました。

電話の向こうの女は本物の母親? 母を語るニセモノ? 目的は?
夫婦はどのように事を運ぼうとするのでしょうか?

☆☆☆       

朝が来る / 辻村 深月 (文芸春秋) [2015年刊]
 
¥1,620 Amazon.co.jp / ¥1,300 Kindle版

養子の朝斗との暮らしが紹介され、
☆☆清和・佐都子夫婦が朝斗を迎えるまでの経緯が辿られ、
☆☆☆☆朝斗の実母片倉ひかりがどんな女性か語られます。

さて、電話をかけてきた女は誰?

第四章=最終章では決着がつきます。
もちろん、清和・佐都子夫婦と電話の女の間で、です。

☆☆☆       


決着に向けて清和・佐都子ふたりがどんな話し合いをしたか、
ごく初期の内容しか書かれていません。

夫婦の決断に最も大事なことは、
初めから第三章までの内容から読み手が想像できます。

小説ですから、いくつかの偶然は起きています。
都合よく、しかし謙虚に。
背景に流れる人の暮らし・迷い、社会の考え方・仕組みなどは
現実そのものです。

決着をなるほどと思える説得力がきちんと用意されています。

☆☆☆       

当たり前と思っていることに、知らぬうちに人を縛られるようです。

朝斗の実母片倉ひかりには、ありのままの姿に加え、
☆☆ひかりの両親が期待するひかり像、
☆☆☆☆清和・佐都子・朝斗による実母像、
と3つの人物像があります。

血のつながっている家族を当たり前だとすれば、
家族の繋がりは、絆か、それとも当たり前=常識の鎖か紙一重。

常識が、
自然な共有でできあがってきたものか、あるいは
家族の中の強者から一方的に授けるものか、のかによって。

当たり前でないことは、自分に起きたことを、自分が今あることを、
人が意識的に受けとめるように導くのかもしれません。

☆☆☆       


朝斗の実母片倉ひかりのどうしようもなさが描かれるほど、
不思議なことに今の両親清和・佐都子の生き方が浮き彫りに。

そのおかげで
意外にも思えるラストシーンを自然に受け止められました。


<目次>

第一章 平穏と不穏
第二章 長いトンネル
第三章 発表会の帰り道
第四章 朝が来る


[end]


*** 読書満腹メーター ***
お気にいりレベル   E■■■■□F
読みごたえレベル  E■■■□□F


ペタしてね
(ペタお返しできません。あしからず。)

*****************************
作家別本の紹介の目次なら
日本人著者はこちら

海外の著者はこちら

*****************************


<----左側の
①「ライブラリーを見る」をクリックし、
②ライブラリの各本の"LINK"をクリックすると
 その本を紹介した記事にとびます。