静かに穏やかに省みるということ ~ 「こぶしの上のダルマ」 | そっとカカトを上げてみる ~ こっそり背伸びする横浜暮らし

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大きな挑戦なんてとてもとても。
夢や志がなくても
そっと挑む暮らしの中の小さな背伸び。
表紙の手ざわりていどの本の紹介も。

相互読者登録のご期待にはそいかねますのでご了承ください。



医師として暮らす町での日々と、
故郷の農村での記憶の断片を描く視線は静かで穏やかながら
安定と危うさが織り交ざっています。

☆☆☆       

こぶしの上のダルマ / 南木 佳士 (文春文庫)
 
¥566 Amazon.co.jp
(2005年刊行、2008年文庫化)

医師として多くの人の死に立ち会ってきた結果、
心のバランスを崩し、家に籠(こも)り続けた後、
長野県でどうにか再び医師の仕事にもどった主人公。

この設定自体は作者自身の姿です。

☆☆☆       

子どもの頃一時同居していた老女にまつわる記憶、
  そこで出会った患者の農夫との対話、
沖縄からきた研修医との山登り、
  長年買い続けた老猫の正直な気まぐれ
 嫌いだった父の記憶と自分の心の折り合い etc.

心と暮らしを再生させた主人公の医師の視線が、
静かに、時に自省しながら、ひとつの場面を切り取りつつ、
周りの人たちが静かに積み重ねてきた時間を描きだします。

☆☆☆       


パニックを再発させないように言動を抑えながら送る日々です。

今や空き家となった実家を遺した農村の人には、
医師という仕事に就く中年男はいいご身分に見えます。
しかも自ら患った医師は頼りなげです。

医師の言動に返されるドキリとするひと言に、
主人公は静かに違いへの配慮の不足を反省します。

☆☆☆       


その静かで穏やかな彼の反省ぶりは、
時おり調子にのりすぎ「しまった」と思うことを繰りかえしている私が、
ぜひとも身につけたいネガティブ・マインドです。


<目次>

こぶしの上のダルマ
山と海
ぬるい湯を飲む猫
稲作問答
洗顔と歯磨き
集落の葬式
歩行
麦草峠


[end]


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