医師として暮らす町での日々と、
故郷の農村での記憶の断片を描く視線は静かで穏やかながら
安定と危うさが織り交ざっています。
☆☆☆ ◆
- こぶしの上のダルマ / 南木 佳士 (文春文庫)
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医師として多くの人の死に立ち会ってきた結果、
心のバランスを崩し、家に籠(こも)り続けた後、
長野県でどうにか再び医師の仕事にもどった主人公。
この設定自体は作者自身の姿です。
☆☆☆ ◆
子どもの頃一時同居していた老女にまつわる記憶、
そこで出会った患者の農夫との対話、
沖縄からきた研修医との山登り、
長年買い続けた老猫の正直な気まぐれ
嫌いだった父の記憶と自分の心の折り合い etc.
心と暮らしを再生させた主人公の医師の視線が、
静かに、時に自省しながら、ひとつの場面を切り取りつつ、
周りの人たちが静かに積み重ねてきた時間を描きだします。
☆☆☆ ◆
パニックを再発させないように言動を抑えながら送る日々です。
今や空き家となった実家を遺した農村の人には、
医師という仕事に就く中年男はいいご身分に見えます。
しかも自ら患った医師は頼りなげです。
医師の言動に返されるドキリとするひと言に、
主人公は静かに違いへの配慮の不足を反省します。
☆☆☆ ◆
その静かで穏やかな彼の反省ぶりは、
時おり調子にのりすぎ「しまった」と思うことを繰りかえしている私が、
ぜひとも身につけたいネガティブ・マインドです。
<目次>
こぶしの上のダルマ
山と海
ぬるい湯を飲む猫
稲作問答
洗顔と歯磨き
集落の葬式
歩行
麦草峠
[end]
*** 読書満腹メーター ***
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(ペタお返しできません。あしからず。)
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