ホップ・ステップ・ジャンプとなるか ~ 「大いなる助走」 | そっとカカトを上げてみる ~ こっそり背伸びする横浜暮らし

そっとカカトを上げてみる ~ こっそり背伸びする横浜暮らし

大きな挑戦なんてとてもとても。
夢や志がなくても
そっと挑む暮らしの中の小さな背伸び。
表紙の手ざわりていどの本の紹介も。

相互読者登録のご期待にはそいかねますのでご了承ください。



いつも読むばかりの小説を、
書けたらいいな、という憧れが湧くことがあります。

それが書いてみよう、と思い、
さらに実際に筆を執り、
それが何枚であろうと、巧拙を別にしても、
一篇を書き終えるまで漕ぎつけるだけでも、
いくつものハードルが待ち構えています。

たとえ書き終えても、それを読者を得るのはまた別世界です。

         

小説の新人賞には数々あります。
小さな賞でも数百人の応募者。
文学界新人賞、群像新人文学賞、新潮新人賞といった
メジャーな賞では1,000人以上の応募者があります。

なかなかの狭き門でもプロの小説家への道の入口です。

         


もうひとつ今では目だたない入口があります。同人誌です。
お金を出し合い、自ら小説雑誌を発行し、そこに作品を発表する
小説・随筆のミニコミ誌です。

出版社の編集者がその同人誌に
目を通してくれていればいいのですが・・・・・・。

大いなる助走 / 筒井康隆 (文春文庫)
¥669 Amazon.co.jp / ¥378 Kindle版

ある地方都市の人たちが発行する同人誌の人たち。

昔、賞の候補者に名を残したことがことがある人もいれば、
長年こつこつと書き続けているひともいれば、
頭でっかちの高校生の文学少女も。

同人であるからといって、書けばその同人誌に載るとは限りません。
同人仲間で評価された後に同人誌の目次に仲間入りできます。
顔見知りの仲間の作品に対する評価は自作を載せたい思いも絡み、
さながらコップの中の嵐といった様相です。

         


そこに、そんな仲間うちからメジャーな文学賞(新人賞ではなく)の
最終候補に残る者が出ます。
驚きやら、妬みやら、表面的な賞賛、受賞への偽りの期待など
なにやらさらにドロドロとしてきます。

さらに、その候補者を推す編集者に導かれ、
その文学賞の選考委員のセンセイたちへの働きかけ。
そのドロドロ具合は、同人仲間の比ではありません。

         


エッジを立てた登場人物の明確なキャラ付けや過激な言動に、
ブンブンと快く振り回されました。

こうしたプロの小説家になろうと助走する人たちや、
文学ビジネスに携わる人達の
世間(=読者)の目にはとまらない狂騒に向けた
作者の皮肉な視線は筆の切れ味を研ぎすませています。

登場人物より作者の目が痛快です。


[end]


*** 読書満腹メーター ***
お気にいりレベル   E■■■■□F
読みごたえレベル   E■■■■□F

ペタしてね
(ペタお返しできません。あしからず。)

*****************************
作家別本の紹介の目次なら
日本人著者はこちら

海外の著者はこちら

*****************************


<----左側の
①「ライブラリーを見る」をクリックし、
②ライブラリの各本の"LINK"をクリックすると
 その本を紹介した記事にとびます。