本好きには、人格を全面否定された気分になるタイトルです。
昭和30年代から、東北弁で若者たちに語りかけていたカリスマが
綴ったエッセイです。
速度はぼくたちの世代の「もうひとつの祖国」であり、
とても住みやすいものだ。
ジェット旅客機、車、陸上100mのウサイン・ボルトへの期待、
メール、ネットを巡るニュース、アプリの普及、、リニアモーターカー、
今でも、スピードはもうひとつの祖国です。
◆
- 書を捨てよ、町へ出よう / 寺山 修司 (角川文庫)
¥555 Amazon.co.jp
実験的な劇団天井桟敷を旗揚げした1967年の刊行。
大学1年の時、「短歌研究」第二回新人賞を受賞を皮切りに、
戯曲などで注目を集めていました。
私たちは「正義」が政治用語であると知るまで、
長い時間と大きな犠牲を払わねばならなかった。
戦後の傷跡を癒しつつ、経済成長時代を背景に
人々が冷蔵庫、洗濯機、TVなどをそろえ、家を手に入れ、
着々と生活の基盤を築く時代に、
あえて予定調和を否定する生活ぶり、活動ぶりです。
◆
生活の安定とともに定年までの一生が透けて見えて訪れる、
予定調和による安心感と引き換えの閉塞感。
生活のどこか一点を破壊してみよ、と
「あした何が起きるかわかっている状況への挑戦」により
つねに新鮮な視野がひらけ説いています。
当時の若者は、予定調和の軌道に乗るうしろめたさを、
彼の言動への賛同で帳消しにしようとしていたのかもしれません。
◆
書を捨てよ、町へ出ようと謳いながら、
多くの若者たちを、
本に、芝居に、映画に、釘づけにしたのはなんとも皮肉です。
[end]
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