予定調和への挑戦 ~ 「書を捨てよ、町へ出よう」 | そっとカカトを上げてみる ~ こっそり背伸びする横浜暮らし

そっとカカトを上げてみる ~ こっそり背伸びする横浜暮らし

大きな挑戦なんてとてもとても。
夢や志がなくても
そっと挑む暮らしの中の小さな背伸び。
表紙の手ざわりていどの本の紹介も。

相互読者登録のご期待にはそいかねますのでご了承ください。



本好きには、人格を全面否定された気分になるタイトルです。
昭和30年代から、東北弁で若者たちに語りかけていたカリスマが
綴ったエッセイです。

  速度はぼくたちの世代の「もうひとつの祖国」であり、
  とても住みやすいものだ。


ジェット旅客機、車、陸上100mのウサイン・ボルトへの期待、
メール、ネットを巡るニュース、アプリの普及、、リニアモーターカー、
今でも、スピードはもうひとつの祖国です。

         


書を捨てよ、町へ出よう / 寺山 修司 (角川文庫)
 ¥555 Amazon.co.jp

実験的な劇団天井桟敷を旗揚げした1967年の刊行。

大学1年の時、「短歌研究」第二回新人賞を受賞を皮切りに、
戯曲などで注目を集めていました。


  私たちは「正義」が政治用語であると知るまで、
  長い時間と大きな犠牲を払わねばならなかった。


戦後の傷跡を癒しつつ、経済成長時代を背景に
人々が冷蔵庫、洗濯機、TVなどをそろえ、家を手に入れ、
着々と生活の基盤を築く時代に、
あえて予定調和を否定する生活ぶり、活動ぶりです。

         

生活の安定とともに定年までの一生が透けて見えて訪れる、
予定調和による安心感と引き換えの閉塞感。

生活のどこか一点を破壊してみよ、と
「あした何が起きるかわかっている状況への挑戦」により
つねに新鮮な視野がひらけ説いています。

当時の若者は、予定調和の軌道に乗るうしろめたさを、
彼の言動への賛同で帳消しにしようとしていたのかもしれません。

         


書を捨てよ、町へ出ようと謳いながら、
多くの若者たちを、
本に、芝居に、映画に、釘づけにしたのはなんとも皮肉です。


[end]


*** 読書満腹メーター ***
お気にいりレベル   E■■■□□F
読みごたえレベル  E■■■□□F

ペタしてね
(ペタお返しできません。あしからず。)

*****************************
作家別本の紹介の目次なら
日本人著者はこちら

海外の著者はこちら

*****************************


<----左側の
①「ライブラリーを見る」をクリックし、
②ライブラリの各本の"LINK"をクリックすると
 その本を紹介した記事にとびます。