悔しい本 ~ 「これでおあいこ」 | そっとカカトを上げてみる ~ こっそり背伸びする横浜暮らし

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大きな挑戦なんてとてもとても。
夢や志がなくても
そっと挑む暮らしの中の小さな背伸び。
表紙の手ざわりていどの本の紹介も。

相互読者登録のご期待にはそいかねますのでご了承ください。



この本を読んだ後ほど悔しいと思いをしたことがありません。
この本は今回読んで感じた何倍も面白いにちがいないのです。

こっそり悔し涙をふいて、その思いを隠し、
今回読んで愉しめたことだけでもとても満足していることが
この場で伝わるといいのすが。

         


アメリカを代表する俳優・監督(野球じゃなくて映画)・脚本家の
ウディ・アレンの短篇集です。

これでおあいこ / ウディ アレン (河出文庫)
 ¥650 Amazon.co.jp

(所収作品は、このブログの最後尾に記載しています)

冒頭の一篇「ミスター・ビッグ」では、見事な肉体美をもつ女性が
探偵事務所を訪れ、「神」の捜索を依頼します。

探偵は依頼主に捜索対象の外見の特徴を問い、
依頼主がみたことがないと応えれば、
なぜ捜索対象が存在しているとわかるのかと問います。

こんな禅問答のような哲学的なやりとりが、
夫の不倫調査依頼と同じように探偵事務所でやりとりされます。

         

これがふつうの神の存在を問う宗教論争ならあたりまえ。
これを探偵事務所という場違いな設定で真顔でやりとりされると、
滑稽でもあり、恐ろしくもあり、読み手を飽きさせません。

登場人物が真面目になるほど滑稽な短篇たちです。

         

1966~1971年にニューヨーカー誌に掲載された短篇が中心。
これはウディ・アレンがコメディアンとして評価が定着後、
映画の脚本や監督を手掛けはじめた時期にあたります。

後に、この本の一場面が彼の映画にも使われているそうです(*1)。


どうやら、他の小説をモチーフにいじってみたり、まねてみたり、
登場人物にも、アメリカの人ならその名を聞いて
ニヤリと口角を上げるにちがいない人たちがいそうなのです。

         


もし、もっと彼の、あるいはアメリカの映画を観ていたら、
海外の小説を読んでいたら、
哲学や宗教の主義・主張、論争を知っていたら etc.

・・・・たら、・・・・たらの大行列を実現していたら
(ここでもまた・・・・たらですが)
もっとこの短篇集を愉しみつくすことができたに違いありません。

         

でも、・・・・たらの大行列を実現していたら
時間がいくらあっても足りません。

その前に、
この短篇集の後にだされたウディ・アレンの短篇集を探すとしましょう。


*1: 「わが哲学」で繰り広げられる主張は、後に映画
「ウディ・アレンのバナナ」と「ウディ・アレンの愛と死」に見られるそうです。

(英語版Wikipediaより)


[end]


*** 読書満腹メーター ***
お気にいりレベル   E■■■■□F
読みごたえレベル  E■■■■□F


<参考:所収作品>

ミスター・ビッグ
蒸気機関なにするものぞ
組織犯罪を考える
シュメード回想録
メッタリング・リスト
死神のノック
成人講座
ゴセッジ=ヴァーデビディアン往復書簡
ドラキュラ伯爵
ハシディズム説話、および著名学者によるその解釈の手引き
肥満質の手記
ビバ・バルガス!
一九二〇年代の思い出
そりゃ聞こえません
いたずらインクの発見と効用
わが哲学
ヘルメホルツとの対話


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