筆の呼吸と脈拍 ~ 「ジャンピング☆ベイビー」 | そっとカカトを上げてみる ~ こっそり背伸びする横浜暮らし

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大きな挑戦なんてとてもとても。
夢や志がなくても
そっと挑む暮らしの中の小さな背伸び。
表紙の手ざわりていどの本の紹介も。

相互読者登録のご期待にはそいかねますのでご了承ください。



文庫本の厚さに好みがあります。
長編だろうと、短篇集であろうと、200ページくらい。

ポケットに入れていることを忘れてしまいそうな重さ、
ページを開いて手にした時の
私の男にしては小ぶりな掌での収まり具合がしっくりきます。

これもそんな1冊です。

         


ジャンピング・ベイビー / 野中 柊 (新潮文庫)
 ¥391 Amazon.co.jp

鹿の子とウィリーは3年前に離婚しました。
二人が飼っていた猫ユキオの遺骨を預けておける期限がきたので
霊園に行くために鎌倉駅で待ち合わせす。

でも鹿の子は大幅に遅刻します。

         


離婚した鹿の子とウィリー、その後独り暮らしの鹿の子、
新しい家族を得たウィリー、亡くなったユキオの思いで。

鎌倉から湘南の海添いに走る江ノ電からの光景と対照的に
重苦しさが漂う設定です。

         


ところが、読み終えて文庫本を閉じた時には、
生々しく命の体温が伝わってきます。

回想をふくむストーリー展開から、読者を振り回す速さが排除され、
描写の粒度が読み手に情景を描ける適度の細やかさをもち、
読み手が鹿の子の心の動きにしっかりと寄り添えます。

         


野中柊のもつ筆の呼吸数と脈拍数は、
私の読書の呼吸と相性がいいのです。

掌ばかりでなく、心にもしっくりきます。


[end]


*** 読書満腹メーター ***
お気にいりレベル   E■■■□□F
読みごたえレベル  E■■■□□F

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