書棚で背表紙がならぶなかで、このタイトルを目にした時、
「ふたり」という言葉にひっかかりました。
そしてタイトルの下に記された作者の名は、
かつて下町の古書店に勤め、その後独立して店を構えた人の名。
他の人には書けない小説との出会いを期待して手にとりました。
◆
- 佃島ふたり書房 / 出久根 達郎 (講談社文庫)
¥588 Amazon.co.jp
明治の終盤から東京オリンピックのあった昭和30年代末までの
東京の下町、佃島の古本屋が舞台です。
母から店を継いだ娘澄子の試行錯誤。
長年そこで働いてきた郡司は代替わりを機に店を去ります。
彫り物を背にした郡司は謎めいた存在です。
物語は時代を前後しながら、
澄子の父親が店を開くことになった経緯と
郡司の時代の波に翻弄された人生が次第に明らかに。
◆
思いのほか骨太の小説でした。
若い男女の恋心、古本の仕入れの裏舞台、下町の人の交わり
といったほんわかした舞台。
明治の少年同士の友情と駆け引き、
歴史的事件と背中合わせの年上の女性への恋心、
思いを寄せた女性との約束を守る意地。
硬軟が自然に絡みあって、個人的で温かでありながら、
歴史の流れを織り込まれたスケールの大きさも魅力です。
◆
明治の男と女の静かな意地は、
古臭さい頑固さばかりではなく、一途な思いにもなります。
こんな気持ちの通いあいもあるのだと気づかせてくれます。
名作でも、話題作でもないかもしれませんが、
巡りあってよかった一冊です。
[end]
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