1920年代への憧れ 「日はまた昇る」 | そっとカカトを上げてみる ~ こっそり背伸びする横浜暮らし

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大きな挑戦なんてとてもとても。
夢や志がなくても
そっと挑む暮らしの中の小さな背伸び。
表紙の手ざわりていどの本の紹介も。

相互読者登録のご期待にはそいかねますのでご了承ください。



文豪ヘミングウェイの名前に気おくれして
その作品を手にしないままでした。

ところが実際に読んでみると、
90年前の作品でありながら、実に活き活きと生々しく
好景気に沸いた世界で都会の生活の倦怠と
地方への旅に対する期待と失望が伝わってきます。

         

日はまた昇る / ヘミングウェイ (新潮文庫)
 ¥724 Amazon.co.jp

アメリカ人のジェイクは第一次世界大戦で負傷後、
パリで記者をしています。

友人と連れだって、あるいは友人の姿を求めて
パリでカフェをわたり歩く暮らしがくりひろげられます。

大戦で湧いた景気と平和の安堵感に後押しされ、
何かを模索しながらも、刹那的で快楽的な日々です。

         

ジェイクは、
友人の作家のビル、ユダヤ人作家ロバートと連れだって、
スペインのパンプローナのフィエスタ(祝祭)に向かいます。
美貌の持ち主ブレッドと裕福な婚約者マイクも合流予定です。

フィエスタの呼び物、牛追いと闘牛は、
ダレたパリでの生活から逃れる格好の強い刺激です。
それでも、彼らは、パンプローナにまで
日頃のモヤモヤ、男女の確執を持ち込みます。

若き闘牛士ペドロ・ロメロの究極的な技量と精神は、
彼らとは好対照です。

         


怠い快楽、刺々しい倦怠、知的で無意味な言葉の応酬。
規則正しく働き、時おり息抜きする暮らしをする身からすれば、
90年前のゴールデン・エイジの非生産的日々に惹かれます。

安定に身を寄せる小市民の目には、
そんな暮らしをいつまでも続ける勇気も欠けていそうなだけに
魅力的に映ります。

         

刹那的な暮らしはいつの時代も、
安全地帯にとどまる者の憧れです。


[end]


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