新鮮な日常 ~ 「言葉の食卓」 | そっとカカトを上げてみる ~ こっそり背伸びする横浜暮らし

そっとカカトを上げてみる ~ こっそり背伸びする横浜暮らし

大きな挑戦なんてとてもとても。
夢や志がなくても
そっと挑む暮らしの中の小さな背伸び。
表紙の手ざわりていどの本の紹介も。

相互読者登録のご期待にはそいかねますのでご了承ください。



時代が違うとはいえ、ごくふつうの日常が、
目のやりどころと書く力がそなわると、こうまで
力強く印象的に描かれるものなのか、と感心してしまいます。

         


ことばの食卓 / 武田 百合子・画 野中ユリ (ちくま文庫)
 ¥691 Amazon.co.jp

1925年(大正14年)生まれの著者が、
子供の頃から老後までの情景と食を綴ったエッセイです。

といっても、美食、珍味を追うものではなく、
暮らしの場面の中に織り込まれた食が登場します。
時代と生活に根差した日常感は、当たり前のようで新鮮です。

         

戦時中、牛乳を1升を持ってきた女性との会話と
ラスト1行は、
淡々とした語り口とはうらはらに
時代と若者の実感がぐいぐいと迫ってきました。(続牛乳)

坂の上の社のサクラを
話し言葉で綴った「花の下」では、
年配者の素直な気持ちが柔らかに伝わってきます。

どんな食を紹介するのか、とタイトルから期待していた
「京都の秋」では意外な食べ物が登場します。

         


以前から評価の高い随筆家として名前は知っていても
実際に作品を手にとらずにいました。

もっと作品を読んでみたくなる1冊でした。


[end]


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