癒しの長い道のり ~ 「海へ」 | そっとカカトを上げてみる ~ こっそり背伸びする横浜暮らし

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大きな挑戦なんてとてもとても。
夢や志がなくても
そっと挑む暮らしの中の小さな背伸び。
表紙の手ざわりていどの本の紹介も。

相互読者登録のご期待にはそいかねますのでご了承ください。



次々と人の生死を目にする仕事に就いている人の心持ちは
経験していない私には想像すらできません。
人を個々に扱いながらも、
親族知人と同様に患者と向き合っていては
心が疲弊してしまいます。

作者自身が医師でありながら長い闘病生活を経験しています。
パニック障害の後、うつ病に。

     


海へ / 南木 佳士 (文春文庫)
 ¥520 Amazon.co.jp

主人公の中年男性医師は地方で、比較的負担の軽い
内科予約診療と人間ドッグの診察を受け持っています。

彼が10年前に心を病み、
呼吸器病棟の責任者からありがたく降格されました。

病んでからというもの彼の行動範囲は極端に狭まりました。
過去働いていた病棟には入ることができず、
外出も他の人が相乗りする乗り物は苦手です。

     


  一ヵ月くらい休暇とってきてみろよ。

海辺の町で開業している医大時代の友人からの誘いです。
新幹線に乗る練習を経て、友人の病院の個室で過ごします。

そこで知り合った少女が教える秘密の場所で過ごす時間。
朝市で知り合った老婆に見る母への思い。

彼はゆっくりと癒されていくのを実感します。

     


とはいっても、10年かけてやっと癒しの入り口に。
これからも完治の時期の定まらない道のりです。

作品の中には彼以外にも心を病んだ人もれば、
病にまで至らずともどこか癒しを求めている人々。

静かな語り口で他人からは見えない格闘が、
主人公の、その他の心の中で人々くり広げられています。

     


作品中の人々の心のありようをたどるには、
南木佳士のゆったりとした文章はぴったりのリズムです。


[end]


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