1000通のラブレター ~ 「たとへば君」 | そっとカカトを上げてみる ~ こっそり背伸びする横浜暮らし

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大きな挑戦なんてとてもとても。
夢や志がなくても
そっと挑む暮らしの中の小さな背伸び。
表紙の手ざわりていどの本の紹介も。

相互読者登録のご期待にはそいかねますのでご了承ください。



ラブレターを書いたことがある人も、
それは付き合う前という場合がほとんどでしょう。

たとえ付き合い始めた後に書いたことがある人でも、
ぶじ実を結び結婚した後まで書いた人となると希少にちがいありません。
私の周りでは、夫婦でブログを書いている素敵なQ&Mおふたりだけです。

     


ところがこの本の著者のふたりは、奥様が亡くなるまで40年間、
三十一文字のラブレターを交わし続けていました。その数1,000 !!

この本のタイトルはこの一首から採られています。

  たとへば君ガサッと落葉すくふやうに私をさらつて行つてはくれぬか

河野裕子が21歳で詠んだ歌です。恋歌としてしばしば引かれる一首です。
ここにも表れているように激しい情念をもつ女性だったようです。

そんなふたりの40年間が短歌とエッセイでたどられています。

たとへば君―四十年の恋歌 / 永田和宏・河野裕子(文藝春秋) [2011年]
たとへば君 四十年の恋歌 / 永田和宏・河野裕子 (文春文庫)

¥1,470 / ¥599 Amazon.co.jp

そう書くと、情愛にあふれた穏やかな人生を思い浮かべそうです。
学者として無給から再出発しながら歌を詠み続けた夫との暮らしは
若い時分は経済的に厳しかったようです。
紹介した歌にもあるように妻はとても激しい人でした。

  吾と猫に声音自在に使いわけ今宵いくばく猫にやさしき /永田
  まっすぐに進むものなり二人乗りの自転車でくいくいとゆく  /河野

ぶつかり合うことはしばしばなら、
ふたりの息の合った瞬間は些細なことも格別だったのでしょう。

夫は学者と歌人の双方で成功を収め、寝る間を惜しんで詠みました。

  しつかりと飯を食はせて陽にあてしふとんにくるみて寝かす仕合わせ /河野

心から夫を案じ、自分もひと安心した暮らしのひとコマです。

     


毎日顔を合わせ、歌を知り尽くしたふたりです。
歌の中の助詞のひと文字の選択でで相手の気持ちを読み取ると考えると、
ぶ厚いラブレターより、言葉多い会話より、
遥かに豊かに気持ちを伝え交わした40年です。

歌人同士の夫婦にしかできないコミュニケーションです。

     


愛おしい、激しい、苦しい、厳しい、熱い、切ない、温かい
40年がこの1冊に詰まっています。


[end]


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