作者の挑戦状 ~ 「模倣の殺意」 | そっとカカトを上げてみる ~ こっそり背伸びする横浜暮らし

そっとカカトを上げてみる ~ こっそり背伸びする横浜暮らし

大きな挑戦なんてとてもとても。
夢や志がなくても
そっと挑む暮らしの中の小さな背伸び。
表紙の手ざわりていどの本の紹介も。

相互読者登録のご期待にはそいかねますのでご了承ください。



推理モノは、謎解きと人の心理がウリの本流です。
作者がつきつけた挑戦状に、読者は挑みます。

読んで、謎を解けた時と、謎の前に屈した時と、どちらが楽しいかといえば、
わかりません。謎を解けたためしがありませんので。

     


模倣の殺意 / 中町 信 (創元推理文庫)
¥777
Amazon.co.jp

小説を書こうと苦しむ坂井正夫が密室で青酸化合物を飲んで亡くなります。

ようやく坂井が発表にこぎつけた小説のタイトル「七月七日午後七時の死」。
坂井の死んだ日時と不自然なほど一致します。

坂井の死を他殺ではないかと疑う彼と付き合いのあった中田秋子。
同じく坂井の死に疑問を抱くルポライター津久見伸助。
ふたりの視点から坂井の死の原因が追われていきます。

坂井の「七月七日・・・・」は、秋子の父、
大物推理作家瀬川恒太郎の最後の作品にそっくり。

秋子、津久見は、それぞれの視点からますます疑念を膨らませます。

     

40年ほど前に書かれた推理モノ。

あまり推理モノを読まない私が読み進みながら浮かべる、
坂井の死の原因の仮説が次々とつぶされていきます。

秋子、津久見とともに、二方向から犯人捜しをしている読者を弄ぶ、
騙し絵のような作品です。

この作品の魅力は、殺人のトリックを解き明かすというより、
作品の仕掛けを読み解く愉しみと言えます。

     


こんな風に騙されるも、悪くありません。愉しみました。
どんな風かといえば・・・・・・、言えません。

やや抑え気味の心理描写は、
作品が書かれた時代や作風によるものなのか、
あるいは、効果的に作品の仕掛けを利かせるためか。

中町信の他の作品を読んでいないのでわかりませんが、
この作品には効果的に作用しています。

     


期待していたのとは趣の異なる騙され方は、
たまに推理モノに手を伸ばす私には、
連敗記録を更新したばかりでなく、
ひと味ちがう本の楽しさを味わえる、なかなか心地よいものでした。


[end]


*** 読書満腹メーター ***
お気にいりレベル   E■■■□□F
読みごたえレベル  E■■■□□F

ペタしてね
(ペタお返しできません。あしからず。)

*****************************
作家別本の紹介の目次なら
日本人著者はこちら
海外の著者はこちら
*****************************


<----左側の
①「ライブラリーを見る」をクリックし、
②ライブラリの各本の"LINK"をクリックすると
 その本を紹介した記事にとびます。