依存関係の形 ~ 「しょっぱいドライブ」 | そっとカカトを上げてみる ~ こっそり背伸びする横浜暮らし

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大きな挑戦なんてとてもとても。
夢や志がなくても
そっと挑む暮らしの中の小さな背伸び。
表紙の手ざわりていどの本の紹介も。

相互読者登録のご期待にはそいかねますのでご了承ください。



円柱を、真上から見れば円の形が見え、真横から見れば長方形に見えます。
斜め上から観れば、円柱本来の姿が見えてきます。

視線の角度により、同じものが異なる姿に映ります。
小説だって同じだと思いませんか?

     


しょっぱいドライブ / 大道 珠貴 (文春文庫 )
¥420
Amazon.co.jp

「しょっぱいドライブ」、「富士額」、「たんぽぽと流星」の3篇を所収。
いずれも、うまくいっていなさそうな人生を歩む「ふたり」が、
狭域避難場所や暫定的安全地帯をみつけた時間が描かれています。

■「しょっぱいドライブ」
60代の九十九さんと30代の「わたし」が親しく接するようになって2年。
「わたし」はバスにのって生まれ育った町に来て、
九十九さんの運転する車で一日をすごします。

家族からダメだしされているふたりが、
ひっそりと時をすごす様子が描かれています。

■「富士額」
10年たっても芽がでない力士と中学生のイヅミが、
ホテルとゲイバーで親密に過ごす1日の物語。

■「たんぽぽと流星」
小学生から20歳の今まで続く同い年の嬉野毬子と「私」の主従関係。
「私」は福岡を出て東京にでて働くことに。
ふたりの主従関係はどのように変化していくのでしょう。


     

時間の長短を問わず、
うまくいっていない「ふたり」が、それなりに落ち着ける空気の中にいると、
そこに生まれるものは依存関係です。

マイナス×マイナスは、プラスになります。
マイナス+マイナスは、より大きなマイナスになります。
マイナスとマイナスがそのままであれば、ふたつのマイナスそのままです。

そんな関係を、そのままを受けとめるか、
受けとめた上に、ほっこりと温かさを心のうちに生むか、
それとも、エネルギーを削がれると感じるか。

     


逃避、狡猾、計算、迷走といった言葉を並べると、
ネガティブな印象が積み重なります。

これらを、うまくいかない暮らしぶりの転換の手段として、
肯定するか、あるいは否定するか、読み手の立ち位置によって、
物語の姿や落とす影の色が異なって見えてきます。



[end]


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