私にもあった少年時代、未来といえば
空飛ぶ自動車やロボットのいる世の中を思い浮かべていました。
コンピュータは電子頭脳とか人工頭脳とかそんな呼び方をしていた時代です。
TVで放映される「鉄腕アトム」を通じて、
手塚治虫が描く未来がそのまま私が浮かべる未来の姿でした。
家電や電話がどんなものだったか記憶にありません。
アトムの生まれたのは2003年ですから、私たちはアトムの時代にいます。
今と比較すると、
実現されていないもの、しているもの、アトムの時代を超えているものを
探しながらもう一度見たいものです。
◆
小説が好きでも
時代を大きくさかのぼる時代小説は苦手という人もいるでしょう。
時代背景がわからないと常識とされている部分が理解できません。
海外の小説が苦手という人もけっこういるでしょう。
その理由のひとつは、たとえ現代を描いていても社会や歴史が異なると、
物語の中で読み取れないことが多いことが挙げられます。
私はいわゆるSFモノが苦手です。
未来を舞台にあまりに大がかりに今ないものを登場させると、
ウソ臭さを感じてしまったり、
現代から未来に起きた想像上の歴史をたどるのには、
私の想像力が不足しているためです。
◆
めずらしくSFモノを手にしてみました。
このくらいの未来が私にはちょうどいいですね。
時代の隔たり具合といい、
想像上の仕掛けが小道具と価値観の変化というあたりで収まっています。
- 最後のウィネベーゴ / コニー・ウィリス 著 / 大森 望 訳 (河出文庫)
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「女王様でも」では
それを女性のあり方に関する価値観の違う未来の女性たちが、
その違いを責めたり、ちゃかしたりします。
そこに登場するのは月経を抑制する薬や処置といった想像上の小道具です。
「タイムアウト」は時間を刻んで異なる時代にはめ込めるかどうか実験する、
変人扱いされる学者を手伝う人たちの話。映画にしてみたい作品です。
「最後のウィネベーゴ」は自然環境の変化で
自動車が悪として扱われ、動物が綱吉時代並みに大事にされている話。
「ウェベーゴ」は米国のキャンピングカーです。
この作品が書かれたのは1988年、物語の舞台は2010年代初頭。
25年前に描かれた今です。
◆
描かれる未来は現代にすでにある種から育てられています。
現代にある考え方の一部をあるシナリオをもとに
強調された価値観としなった姿で表れています。
風刺や皮肉に満ちた物語の背景設定やセリフに、
どこかの予備校講師ではありませんが、「今でしょ」と声をあげたくなります。
読むばかりでなく、かといって小説を書かないまでも、
今ある価値観を未来の歴史の流れにのせて、
未来の社会を描いて遊ぶのも面白そうです。
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