静かな狂気 ~ 「痺れる」 | そっとカカトを上げてみる ~ こっそり背伸びする横浜暮らし

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大きな挑戦なんてとてもとても。
夢や志がなくても
そっと挑む暮らしの中の小さな背伸び。
表紙の手ざわりていどの本の紹介も。

相互読者登録のご期待にはそいかねますのでご了承ください。

映画にしても、小説にしても、
常軌を逸した登場人物には独特の引力があります。

常軌の上で平凡に暮らす私にとって、
道から外れる勇気や、行動の先を読めない未知は魅力です。

それが、周りからみても平凡な人物が、人知れず常軌を逸していたとしたら、
そして、それを後から知ることとなったら、これは憧れとはちがって恐怖です。

    

痺れる / 沼田 まほかる (光文社文庫)
 ¥600 Amazon.co.jp
文庫本300ページほどに怖い話9篇を収めた短編集です。

独り秘密を抱えて人生を送ってきた老女が、柔らかに語る心持ち。
  親切を装ってひとり住まいの女性にたかる男と、彼の来訪を期待する女。
ゴミの分別を通して他人の私生活に踏み込む老人と、彼に殺意を抱く女。

こんなにバリエーションがあるものなんだ、と感心するほど、
作者は、これでもか、と静かな狂気を繰り出してきます。 

    

1篇30~40ページを読むうちに、
いつの間にか登場人物の日常に寄り添っていると、
思わぬ終盤の展開に、ぽんと突き放されてしまいました。

この突き放され具合が、大仕掛けでなく、さりげなく、穏やかですらあります。
私には心地より裏切りでした。

    

長編の恐怖モノの「これでもか」と積み重ねてくる怖さとはちがって、
ひとつひとつが異なる怖さが繰り広げられる作品集は、
なるほど、なかなかシビレルできです。

こんなに惹かれるところをみると、
私の中にもこうした狂気の種が宿っているのかもしれません。
うふふ。


[end]


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