鉄道には、鉄道マニアならずとも、
様々な気持ちを湧き起こす何かがあります。
宮沢賢治の「銀河鉄道の夜」、アニメ「銀河鉄道999」、
精密なジオラマ、TV番組「ぶらり途中下車の旅」 etc.
これらはそんな気持ちの表れでしょう。
◆
- ロスト・トレイン / 中村 弦 (新潮文庫)
¥620 Amazon.co.jp
ある日、雑誌で紹介されていた奥多摩の廃線跡を訪ねた牧村は、
そこで鉄道マニアの平間という初老の男性と出会います。
歳の差があってもウマが合い、折にふれふたりは会うようになります。
なのに、
平間は「まぼろしの廃線跡」の話に触れた後、消息を絶ってしまいます。
牧村が平間の消息を求めるうち、平間と鉄仲間の若い女性の菜月に行き着き、
ふたりで平間の足跡を追います。
◆
序盤にちょっと基礎知識的な記述が目立ちますが、
そこを通りすぎれば、鉄道マニアでなくても、
"鉄"の世界を舞台にした物語に入れます。
"鉄"でなくても共有できる鉄道への郷愁、
「キリコノモリ」のキーワードを手掛かりに謎を追う推理との同行、
ある廃線跡の現地の人たちが言葉を濁す秘密、
それらを結ぶある鉄道の歴史、
牧村と菜月の前に繰り広げられるファンタスティックな光景、
と要素が盛りだくさんの作品です。
◆
説明的、理屈っぽくなりがちな要素を、
語り手の若い牧村に、若者ならではの初々しい人間関係を語らせ、
取っ付きやすい読み物に仕上がっています。
◆
サスペンスとか、ファンタジーとか、といった分類は、
読み手のよい手掛かりになることもあれば、目障りになることもあります。
分類好きがこの作品をどこかに分類しようとしたら、迷いそうです。
[end]
***
読書満腹メーター ***
お気にいりレベル E■■■□□F
読みごたえレベル E■■■□□F
*****************************
作家別本の紹介の目次なら
日本人著者はこちら
海外の著者はこちら
*****************************
<----左側の
①「ライブラリーを見る」をクリックし、
②ライブラリの各本の"LINK"をクリックすると
その本を紹介した記事にとびます。