廃線跡をたどる ~ 「ロスト・トレイン」 | そっとカカトを上げてみる ~ こっそり背伸びする横浜暮らし

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大きな挑戦なんてとてもとても。
夢や志がなくても
そっと挑む暮らしの中の小さな背伸び。
表紙の手ざわりていどの本の紹介も。

相互読者登録のご期待にはそいかねますのでご了承ください。


鉄道には、鉄道マニアならずとも、
様々な気持ちを湧き起こす何かがあります。

宮沢賢治の「銀河鉄道の夜」、アニメ「銀河鉄道999」、
精密なジオラマ、TV番組「ぶらり途中下車の旅」 etc.

これらはそんな気持ちの表れでしょう。

    

ロスト・トレイン / 中村 弦  (新潮文庫)
 ¥620 Amazon.co.jp
牧村はマニアの中に入れば、マニアといい切れるほどでもない鉄道好き。
ある日、雑誌で紹介されていた奥多摩の廃線跡を訪ねた牧村は、
そこで鉄道マニアの平間という初老の男性と出会います。

歳の差があってもウマが合い、折にふれふたりは会うようになります。
なのに、
平間は「まぼろしの廃線跡」の話に触れた後、消息を絶ってしまいます。

牧村が平間の消息を求めるうち、平間と鉄仲間の若い女性の菜月に行き着き、
ふたりで平間の足跡を追います。

    

序盤にちょっと基礎知識的な記述が目立ちますが、
そこを通りすぎれば、鉄道マニアでなくても、
"鉄"の世界を舞台にした物語に入れます。

"鉄"でなくても共有できる鉄道への郷愁、
  「キリコノモリ」のキーワードを手掛かりに謎を追う推理との同行、
ある廃線跡の現地の人たちが言葉を濁す秘密、
  それらを結ぶある鉄道の歴史、
牧村と菜月の前に繰り広げられるファンタスティックな光景、

と要素が盛りだくさんの作品です。

    

説明的、理屈っぽくなりがちな要素を、
語り手の若い牧村に、若者ならではの初々しい人間関係を語らせ、
取っ付きやすい読み物に仕上がっています。

    

サスペンスとか、ファンタジーとか、といった分類は、
読み手のよい手掛かりになることもあれば、目障りになることもあります。

分類好きがこの作品をどこかに分類しようとしたら、迷いそうです。


[end]


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