歌人や俳人には旅が似合います。
旅先で訪れた土地で、その瞬間を、
三十一文字や十七文字に結晶させる力は旅の記録にうってつけです。
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- ちいさい旅 みーつけた / 俵 万智 (集英社be文庫)
¥730 Amazon.co.jp
短歌を添えて紹介するエッセイです。
風土に溶け込んでいる何かを作る人、人を迎える宿の人、
店で客をもてなす人、人、人、人に尽きるエッセイです。
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沈下橋沈下してゆくさまを見つ
今夜は川に抱かれて眠れ
高知の四万十川で、
増水すると沈んでしまう沈下橋が、ほんとうに沈んでいく様子を目にして、
そこが川の土地だと気づいた夜、宿で床についた時の気持ちです。
取材の旅だったので、ほんとうは慌ただしかったのでしょうが、
そんなバタバタ感が時おり顔を見せながらも、
その土地のゆっくりと時間を積み重ねた年輪を、文章と短歌で描きます。
連載もののエッセイの企画による編集者が準備した旅ではなく、
俵万智が自ら思いたった旅だったら、
同じ土地を訪れたとしても、また違った思いが結晶したことでしょう。
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その土地で育まれた、あまり人目につかない技を訪ね歩く旅は、
ついつい旅に出ると、急いで名所旧跡をなぞる私の目には、
なんとも贅沢な寄り道に映ります。
せっかちな私にはとてもできそうもない旅を、
俵万智の後を荷物持ちで付き添ったような気分にしてくれます。
麗しきご都合主義的錯覚です。
◆
このところ、
小説でも、エッセイでもいいから旅モノを読みたくなることが増えました。
休暇不足による旅欠乏症による禁断症状かもしれません。
ちいさい旅に出てみたい。
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