根を張る恐怖 ~ 「燃える風」 | そっとカカトを上げてみる ~ こっそり背伸びする横浜暮らし

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表紙の手ざわりていどの本の紹介も。

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この作品を読み進むうちに、じわじわと恐怖が根を広げました。
主人公は小学生の少女なのに。

人が殺されるわけでもないのに、
読み終えて、私の中にさらに恐怖の根が張りました。

    

燃える風/津島 佑子 (中公文庫)
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小学校5年生の少女有子(ありこ)。
彼女の父親は女性と心中して亡くなりました。
伯母や従妹と、自分を押し殺しながら暮らしています。

    

学校では有子は、ひとり、またひとりと標的の同級生に近づきます。

  人間なんて簡単に死んじゃうよ。

同級生たちに恐怖を植え付けていきます。
ひとりずつ、丹念に。

    

学校から見える隣りの病室の窓辺に姿を表す若い女性に憧れ、
やがて知り合う過程で、さらにその女性の婚約者に憧れます。

その後、その彼女を失った婚約者には憎悪を植え付けます。

物語が進むにつれひと皮、事件が起きてはひと皮、
有子(ありこ)は一枚ずつ表皮がはがれ、
殺人者に近づいていくような気がします。

    

津島佑子は太宰治の次女です。
この小説の主人公の境遇は、作者のそれと重なる部分があります。

主人公の名前、有子(ありこ)は、読み方を換えれば、
作者とおなじ「ゆうこ」とも読めます。

有子は作者自身ではありませんが、
作者の中にある素質をかき集めて像を結び、血を通わせ、

  - ひとつまちがっていたらこうなっていたかもしれない、

という、もうひとりの自分なのかもしれません。


[end]

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