絶え間ない胸騒ぎ ~ 「アミダサマ」 | そっとカカトを上げてみる ~ こっそり背伸びする横浜暮らし

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大きな挑戦なんてとてもとても。
夢や志がなくても
そっと挑む暮らしの中の小さな背伸び。
表紙の手ざわりていどの本の紹介も。

相互読者登録のご期待にはそいかねますのでご了承ください。

読むと自分が好みとはかけ離れたエネルギーを費やすとわかっていても、
手にとりたい本があります。
怖いもの見たさとでもいったらいいのでしょうか。

気力、体力を整えてからページをめくりました。

    

アミダサマ/沼田まほかる (新潮文庫)
¥620 Amazon.co.jp

僧の浄鑑と若者の悠人は、
それぞれ引き寄せられるように廃車置き場にたどりつきます。
そこに放置された冷蔵庫の中に息絶え絶えの少女を発見します。

浄鑑は悠人を帰し、その少女ミハルを祖母とともに育てます。

    

近所の犬と飼い猫の死を契機に、
浄鑑とミハルの周りには不吉な出来事が続きます。

一方、もとの生活に戻った悠人には、
気持ちの発育が未熟なリツコに歪みを伴う愛情が芽生えます。

最後はふたつの物語が再びひとつの場面にたどり着く結末。

    

浄鑑の周辺を軸にした物語と、悠人とリツコを軸にした物語が、
交互に登場して並行して物語は進みます。

浄鑑の物語には、不吉な兆しと恐怖が横たわります。
悠人の物語には、哀しさをまとった仄かな期待が漂います。

交互にふたつに、絶え間なく胸騒ぎを覚えながら読み進みました。

    

ことなる波長をもつ物語を同時に進め、
その個々の物語のどちらとも異なる色彩をもった波長が生みだす

沼田まほかるの物語の紡ぎだす色合いは、
ひとつのジャンルに収めきれない複雑系です。


[end]

*** 読書満腹メーター ***
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