若いころ、両親をウザったく思う時期があります。
親戚のおばんさんたちとの付き合いも面倒だったり。
自分がつくってきた友だちたちとは違い、
生まれた瞬間から縁が完成している人たちを、
それも近い存在ほど疎ましく思う時期とでもいったらいいでしょうか。
◆
裸/大道 珠貴 (文春文庫)
¥530 Amazon.co.jp
大道珠貴の初期の作品集。
「裸」、「スッポン」、「ゆううつな苺」の3篇が収められています。
「裸」と「スッポン」の主人公は、家を出た若い女性が、
「ゆううつな苺」は中学生の女の子が主人公です。
いずれも、親や親戚と、主人公の周りの人たちとの
距離感が描かれています。
◆
「裸」の語り手<あたし>は、祖母の家の両隣に住む、
自分の両親、伯母と従妹たちの群れを疎ましいと感じています。
そこから歩いて20分のアパートでひとり暮らしです。
伯母の紹介で従妹の美和姉ちゃんとおなじクラブで、
ホステスのバイトをしています。
<あたし>の目には、その店の客たちの多くも、
何をやってんだか、といった風に意味ない人と映ります。
かといって、自分もウダウダとした日々の暮らしです。
◆
誰とも距離を置き、ひとりぼっちの立ち位置を選択していながら、
疎ましいと感じる親族たちと絶えず繋がっています。
彼らから話しかけられるとつっけんどんな態度で突き放していますが、
かといって、きっぱりと縁を絶つということがありません。
実家から歩いて20分の独り暮らしは、その距離感の象徴です。
◆
「裸」の<あたし>にしても、「スッポン」の<丸子>にしても、
経済的にも、住まいという物理的にも、ひとり立ちしているようで、
親族たちを嫌っているようで、
幼いころを一緒にすごした親族たちの声に安心を感じているようです。
ひとりに、本当にひとりぼっちになるのは、心許ないですもんね。
心のどこかで、孤立に対する保険をかけるのも、仕方ありません。
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