10年前の種 ~ 「あのとき始まったことのすべて」 | そっとカカトを上げてみる ~ こっそり背伸びする横浜暮らし

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大きな挑戦なんてとてもとても。
夢や志がなくても
そっと挑む暮らしの中の小さな背伸び。
表紙の手ざわりていどの本の紹介も。

相互読者登録のご期待にはそいかねますのでご了承ください。

長いこと人間をやっていると、○年ぶりの再会に時折で出くわします。
この1年ほどだけでも、10年以上の空白を挟んだ再会が3回。

いずれも、昔話に花を咲かせたり、近況を、今の悩みを打ち明けたり、
空白期間が長いような、まるでないような不思議な空間が生まれました。

    

あのとき始まったことのすべて/中村 航 (角川書店)[2011年] ¥1,470
あのとき始まったことのすべて/中村 航 (角川文庫)¥580 Amazon.co.jp


岡田は入社3年目のメーカーの技術営業。
偶然、中学の時隣りの席だった女子石井さんと連絡がとれ、
有楽町マリオン前で待ち合わせ。会うのは10年ぶりです。

緊張して待つうちに石井の姿をとらえたとたん、
あの頃と変わらないこと、今なら感じとれることが、
一瞬のうちに心のうちに湧きあがります。

    

10年間の空白が嘘のようなふたりの距離感、
どちらか一方の記憶にしか残っていないシーンの断片の交換、
互いに知らない10年間にあったこと etc.

10年ぶりに合う、卒業以来初めて会うということは、
こういうことなんですね。

    

岡田~石井と同じ班だった、人づきあいが不器用な白原さんと、
岡田とプロレス(ごっこ)のタッグのパートナーだった柳が絡んで、
ふたりだけでは、欠けたままになってしまうシーンを、
感情の膨らみをもたせた場面にしてくれます。

    

4人で修学旅行で法隆寺を訪れたときのこと。

  いつかまたここに来よう。
  そんな気持ちを、私はここに残そう。


「いつかまた・・・・」は誰でも浮かぶ気持ちです。
「そんな気持ちを、私はここに残そう」というまでの気持ちは、
人づきあいが苦手な彼女ならではのものです。
さまざまなシーンが彼女の記憶に刻まれます。

    

懐かしさに溺れた会話だけでは、やがて逢う意味は薄れていきます。
再会を機に新たなつきあい方が始まる予感こそ、再会の醍醐味です。

10年前にあったことの積み重ねが今の必然か、偶然かはさておいて、
さらに10年後、30代になった彼らの姿が楽しみです。


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