このところ忙しいので、よく小旅行に出たいと思いながら、
なかなか実現しません。
いざ旅にでようとすれば避けられない、
予定の調整、場所選び、宿さがし、足の手配と、旅の前の煩わしさに、
ついつい旅を後送りしています。
◆
幻の旅/林 望 (文春文庫)
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私にとっての現実の旅は・・・・・・(略)
だから、いま心の中の旅に出てみようと思う。
プロローグのなかの文です。
なるほど、じゃあ「心の中の旅」におつきあいしましょうか、
という気分になる文章でした。
どの物語も3ページの文章に、著者の描いた1枚の絵で構成されています。
廃駅の前の立て看板に巡らす思い、
朝、窓を開けたら蘇った匂いの記憶といった、
旅先で目にした一場面のような物語たちです。
◆
たった3ページの文章でも、というか、
3ページの文章だからこそというか、含みのある味わいです。
「簾(すだれ)の向こう側」という物語の3行目にこんな言葉があります。
「きょうは、どこにお行きやすの」
タイトルとこれだけで、
主人公が夏に京都の宿に泊った朝だとわかり、
簾を通して朝日に照らされた京都の日常が、
旅人の目に映る光景が浮かびます。
◆
絵も物語によって筆や鉛筆のタッチがことなりなっています。
人は描かれていものはごく僅かで、物や光景がほとんどです。
それでいながら、どれも温かみをもっています。
◆
ベッドの脇にいつも置いておいて、
気まぐれにぱらりとめくってみるのにうってつけの本です。
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