いよいよ映画「アーティスト」が日本でも上映されますね。
アカデミー賞5部門に輝いたこの作品の特徴といえば、
サイレント(無声)のモノクロ(白黒)映画です。
表現としては、制約があって不利なはずなのに快挙です。
何も映画に限ったことではありません。
本にだって、そんな作品があります。
◆
アライバル/ショーン・タン(河出書房)[2011年]
¥2,625 Amazon.co.jp
文字のない絵だけの本です。その絵もモノトーンで描かれています。
絵なので、動きのある映画よりさらに表現は制約をうけます。
ARRIVAL:到着、・・・・新参者、誕生 etc.
幼い娘と両親の3人家族の父親がひとり、
見知らぬ国に旅立つ朝から物語はじまります。
貧しい暮らしから抜けだす糸口を求めた決断のようです。
◆
部屋の小物をクローズアップした小さな絵、
初めて降り立つ街を鳥瞰する大きな絵、
主人公の物憂い寝起き、
老人が語る戦場と、焼け野原となった自分の町の回想、
異国を感じる空想の動物や食物、
といったものが、精緻で柔らかな筆づかいで描かれています。
街の空気、人々の喜怒哀楽、時代の息吹が伝わってきます。
雄弁なSilentです。
◆
コミックならあたりまえのセリフの吹き出しがない分だけ、
この本の絵のレイアウトは自由です。
* 吹き出しがあると、先に言う人を右に描きます。(日本なら)
こうした限定自由を頼りに
語ることのできない作者は、絵に込めるべきものを考え抜き、
読むことのできない読み手は、絵から読みとれるものを探し抜きます。
読み手は想像力を働かせるうちに、
懸命に、徐々にアンテナを育てていきます。
◆
作者があえて自らに制約を課した挑戦により誕生した"ARRIVAL"。
退化しかかっていた私の感性を蘇らせてくれました。
この本、
ツレアイがあの時に用意してくれた、私への誕生日プレゼントです。
Fine Play!
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