雄弁なSilent ~ 「ARRIVAL」 | そっとカカトを上げてみる ~ こっそり背伸びする横浜暮らし

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大きな挑戦なんてとてもとても。
夢や志がなくても
そっと挑む暮らしの中の小さな背伸び。
表紙の手ざわりていどの本の紹介も。

相互読者登録のご期待にはそいかねますのでご了承ください。

いよいよ映画「アーティスト」が日本でも上映されますね。

アカデミー賞5部門に輝いたこの作品の特徴といえば、
サイレント(無声)のモノクロ(白黒)映画です。

表現としては、制約があって不利なはずなのに快挙です。

何も映画に限ったことではありません。
本にだって、そんな作品があります。

    

アライバル/ショーン・タン(河出書房)[2011年]
¥2,625 Amazon.co.jp

文字のない絵だけの本です。その絵もモノトーンで描かれています。
絵なので、動きのある映画よりさらに表現は制約をうけます。

  ARRIVAL:到着、・・・・新参者、誕生 etc.

幼い娘と両親の3人家族の父親がひとり、
見知らぬ国に旅立つ朝から物語はじまります。
貧しい暮らしから抜けだす糸口を求めた決断のようです。

    

部屋の小物をクローズアップした小さな絵、
 初めて降り立つ街を鳥瞰する大きな絵、
  主人公の物憂い寝起き、
   老人が語る戦場と、焼け野原となった自分の町の回想、
    異国を感じる空想の動物や食物、

といったものが、精緻で柔らかな筆づかいで描かれています。

街の空気、人々の喜怒哀楽、時代の息吹が伝わってきます。
雄弁なSilentです。

    

コミックならあたりまえのセリフの吹き出しがない分だけ、
この本の絵のレイアウトは自由です。

  * 吹き出しがあると、先に言う人を右に描きます。(日本なら)

こうした限定自由を頼りに
語ることのできない作者は、絵に込めるべきものを考え抜き、
読むことのできない読み手は、絵から読みとれるものを探し抜きます。

読み手は想像力を働かせるうちに、
懸命に、徐々にアンテナを育てていきます。

    

作者があえて自らに制約を課した挑戦により誕生した"ARRIVAL"。
退化しかかっていた私の感性を蘇らせてくれました。

この本、
ツレアイがあの時に用意してくれた、私への誕生日プレゼントです。

Fine Play!


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