失って気づくこと ~ 「ハラスのいた日々」 | そっとカカトを上げてみる ~ こっそり背伸びする横浜暮らし

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大きな挑戦なんてとてもとても。
夢や志がなくても
そっと挑む暮らしの中の小さな背伸び。
表紙の手ざわりていどの本の紹介も。

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嫁いだ次女モモがうちに来た時、居間をみわたして
ぽつりとこんなことを言いました。

  - ねえ、あたしのよりTAMAの写真の方が多くない?

TAMAは2年前に14歳で亡くなった、野良猫あがりの愛猫です。

そういえば、以前ツレアイもこんなことを言っていました。

  - モモが家をでたときより、TAMAのときの方がキツかったわ。

    

ハラスのいた日々/中野 孝次 (文春文庫)
¥500 Amazon.co.jp

エッセイスト、作家、翻訳者、ドイツ文学研究家と多彩な顔をもつ、
中野孝次のエッセイです。

中野夫妻が都内の団地から横浜の郊外の一戸建てに移った折に、
妹さんから贈られた引越祝いが柴犬の仔犬でした。

夫妻が柴犬ハラスと暮らした13年間とその後がつづられています。

    

庭で駆けまわる姿、食べるものにわがままな気質、
夫妻の留守をポストの上で待ちわびる姿。

夫妻のハラスへの思いは日々つのり、
ハラスを通じて知り合った人たちとのつきあいも広がり、深まります。

旅先の積雪の地で、ハラスが姿を消してしまい、
夫妻は、あらためてハラスがどんなに大切な存在だったか知ります。

仔犬だったハラスも、やがて夫妻の年齢を追い越していきます。

    

30から40年前のことが書かれているのに、
その思いは色あせることなく、直球勝負で心に訴えてきます。
ハラスを亡くした後だからこそ、書くことができた作品です。

こういう大事な存在と暮らした日々があるって幸せですね。

失ったり、失うかもしれないと実感した時、
あらためてその存在の重さに気づくのはさびしいものですが、
それがありのままの姿です。

    

私がツレに「モモよりTAMAか」とつぶやいたら、ツレが言っていました。

  - だって、モモとはいつでも会えるもの。


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