嫁いだ次女モモがうちに来た時、居間をみわたして
ぽつりとこんなことを言いました。
- ねえ、あたしのよりTAMAの写真の方が多くない?
TAMAは2年前に14歳で亡くなった、野良猫あがりの愛猫です。
そういえば、以前ツレアイもこんなことを言っていました。
- モモが家をでたときより、TAMAのときの方がキツかったわ。
◆
ハラスのいた日々/中野 孝次 (文春文庫)
¥500 Amazon.co.jp
エッセイスト、作家、翻訳者、ドイツ文学研究家と多彩な顔をもつ、
中野孝次のエッセイです。
中野夫妻が都内の団地から横浜の郊外の一戸建てに移った折に、
妹さんから贈られた引越祝いが柴犬の仔犬でした。
夫妻が柴犬ハラスと暮らした13年間とその後がつづられています。
◆
庭で駆けまわる姿、食べるものにわがままな気質、
夫妻の留守をポストの上で待ちわびる姿。
夫妻のハラスへの思いは日々つのり、
ハラスを通じて知り合った人たちとのつきあいも広がり、深まります。
旅先の積雪の地で、ハラスが姿を消してしまい、
夫妻は、あらためてハラスがどんなに大切な存在だったか知ります。
仔犬だったハラスも、やがて夫妻の年齢を追い越していきます。
◆
30から40年前のことが書かれているのに、
その思いは色あせることなく、直球勝負で心に訴えてきます。
ハラスを亡くした後だからこそ、書くことができた作品です。
こういう大事な存在と暮らした日々があるって幸せですね。
失ったり、失うかもしれないと実感した時、
あらためてその存在の重さに気づくのはさびしいものですが、
それがありのままの姿です。
◆
私がツレに「モモよりTAMAか」とつぶやいたら、ツレが言っていました。
- だって、モモとはいつでも会えるもの。
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