人とちがっている、ということに忠実なまま生きるということは案外孤独で、
同好の士とめぐり会うと、それだけでぐっと親密になるのかもしれません。
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「下妻物語」でぐっと一般にも知名度があがった感がある作者です。
この作品が、作者自身が大麻所持で逮捕された後の復帰作です。
タイマ/嶽本 野ばら (小学館文庫)
¥670 Amazon.co.jp
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ロリータ趣味の小説家<僕>と同好のストリッパー<あい>の恋愛物語です。
<僕>が大麻所持で逮捕された後の取り調べ、独房で<あい>を思う苦悩と、
<あい>との出逢いと今日にいたる足取りが交互に語られます。
ロリータ趣味の一致と、
パンクバンドNIRVANA(ニルヴァーナ)のカート・コバーンへの憧れが、
ふたりを結びつけます。
拘留中に、そして保釈後に<僕>が考え至った<あい>との、愛の形は・・・・・・。
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冒頭の逮捕シーン、警官と<僕>のやりとりは、
ちぐはぐで軽快でした。笑いました。
このシーンのおかげで、
私はロリータとパンクの無知の壁を克服にはほど遠いながらも、
それらと格闘しながらこの本を読み終えることができました。
ロリータブランド"BABY, THE STAR SHINE BRIGHT"の服や、
NIRVANA / コートニーの音楽や映像をネットの助けをかりて知るにつれ、
ほほぉ、と感心とも距離感の縮まらない諦めともつかない声がもれました。
それでも読みすすむにつれ、ペースは加速度を増していきました。
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「バッカだなぁ」と生き方の不器用さにあきれながらも、
あまりの距離感からか、一途なふたりが愛おしく思えてきたのです。
自分の価値感にあくまでも正直あろうとする<あい>と、
年上だからという理由からではない<僕>の生き方のずるさのギャップが、
単なる異次元の趣味のなかにもリアルな生活感を感じさせます。
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なんだか、本の読み手としてひと皮むけたかも、と思わせてくれる、
異次元趣味との出逢いでした。
次は、「エミリー」か「ロリヰタ。」あたりにもどってみるか、
最近の「十四歳の遠距離恋愛」をさがしてみようか、迷っています。
でも、
"BABY, THE STAR SHINE BRIGHT"の服に挑戦する気はありません。
今のところは。
*** 読書満腹メーター ***
お気にいりレベル E■■■■□F
読みごたえレベル E■■■□□F
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