貴重なチャンスです ~ 「奇跡も語る者がいなければ」 | そっとカカトを上げてみる ~ こっそり背伸びする横浜暮らし

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大きな挑戦なんてとてもとても。
夢や志がなくても
そっと挑む暮らしの中の小さな背伸び。
表紙の手ざわりていどの本の紹介も。

相互読者登録のご期待にはそいかねますのでご了承ください。

誰でも経験があることを経験するのも悪くありませんが、

そんな体験をする人なんていないこととか、
自分ひとりだけこっそりと体験することなんて、なかなかありませんよね。

    

奇跡も語る者がいなければ/ジョン・マグレガー (新潮クレスト・ブックス)[2004年]
原題 If Nobody Speaks of Remarkable Things
¥2,310 Amazon.co.jp

1997年8月31日の午後に起きたある出来事に端を発した奇跡の話です。

といっても、奇跡と呼ぶにはあまりにも小さな偶然の連なりです。
でも、誰かに知っておいてほしいできごと、といわれれば、
ああそうかもしれない、と思えるていどの奇跡です。

    

イギリスのとある通りの両側に軒を接した家々にすむ人たちがいました。

静かに暮らす老夫婦だとか、
  朝から大きな声で子供たちを叱る母親のいる家族や、
電話で何度もゴミの回収を役所に要請するパキスタン人やら、
  手にひどい傷を持つ父と娘だとか、

いろいろというより雑多という方がふさわしい人たちの暮らす町です。
その出来事は、その町で起きました。

    

ふたつの流れで綴られている物語のひとつは、
そんな町の8月31日の朝からその時までの様子が、こと細かに描かれています。

もうひとつは、22番地に住んでいた小さな眼鏡をかけていた女の子が、
あの出来事の3年後に、"わたし"として語る物語。

    

一軒一軒の家の詳しい描写は、読んでいて町のようすが目に浮かぶようです。
そんな描写が、その瞬間めざして時を刻む時計のように進みます。

3年後に"わたし"が語る物語も、
彼女のあの瞬間後の生活が少しずつ明らかになっていきます。

最後にそのふたつの物語が、あの出来事により結びつくのがわかっていながら、
"奇跡"ってなんだろう、と謎を抱えながら読む楽しみがここにあります。

    

そしてなによりも、
奇跡の証人になる経験なんて、滅多にあるもんじゃありませんよ。
それも、誰も気づかない小さな奇跡の証人なんてね。


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